2006年02月10日

アニメDay・後編/恐るべし、堀江由衣

 有楽町の東京国際フォーラムは、路面にライトがあって光の道を作っていて、とても幻想的だった。すごい人混みの中を進むと、建物に沿って長蛇の列。えっ!?これって・・・。

 列の最後尾でスーツ姿のプラカードを持っている人に聞くと、堀江由衣=ほっちゃん(声優/29歳)のライブを観に来たファンに列だということ。すごい・・・。私は慌てて列に並んだ。

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  ↑ファンの列。すごいよ・・・。

 それにしても・・・こんなにほっちゃんのファンっているんだ。私は普段ほっちゃんのラジオ番組をMDに録音して聴いて、紹介されるリスナー=ファンの存在を耳から感じていた。しかし実際巨大な数のほっちゃんファンを目の当たりにすると、その数の多さに驚きを禁じ得ない。ほっちゃんあるいはアニメファンなど、そういうものを甘く見ていた気がする。また、いつもジュニアアイドルの100人弱くらいの小規模なイベントに参加しているので、その感覚で行ったせいか、そのギャップに驚いてしまったのかもしれない。

 お金で換算するなんて世知辛いけれど、これだけ声優のライブに人が集まるのである。オタク市場というのは、誠に巨大という他はない。

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    ↑奥の建物がホールA。

 慌ただしく、会場入り。ロビーのグッズ売り場に行くと、人混みで何が何処に売っているのか分からない。とりあえずパンフレットが欲しかったので、係員にグッズ売り場の場所を聞いてそこへ向かうと、これまた長蛇の列。最後尾にいた係員が大声で、「今からお並び頂く方は、もう開演時間に間に合いませ〜ん!公演後にご利用下さ〜い!」と叫んでいる。凄すぎ。

 公演後で良いかと、自分の席へとりあえず向かった。私は二階席。幾重にもエレベーターを乗り継いで、グレーの絨毯の迷路のようなホール内を席へ急いだ。

 会場内に入ると、すごい広く、高さもある巨大な空間であることに驚く。ステージは、遙か前方に見下ろす感じ。

 回りのファンを見ていると、気合いが入っているなぁと感心する。ほっちゃんのロゴ入りTシャツ、ロゴ入りリストバンド、頭にはウサギの耳飾り。耳飾りは、男女関係なくしている。とにかく身体一杯に、ほっちゃんファンであることをアピールしている。私はというと、そこまでほっちゃんファンであることをアピールする意欲もない。

 プロレスの話だが、25歳くらいまでの私はよくプロレス会場へ足を運んだのだが、プロレス関係のTシャツやらキャップやらを身につけて、プロレスファンであること外に誇示していた。我こそはファンとしてすごいんだぞ、っていうところが見せたかったのだと思う。

 ほっちゃんグッズに身を包んでいるファン達も、そのような一種の自己顕示欲からそうしているのではあるまいか。だからといって、それを否定するつもりはない。若い頃は、そういう季節があるものだなぁと感じているのである。今の私は、そこまで自分を誇示するのは疲れたし、主役は若い人に譲るという感じである。まぁ、Tシャツや何やらを買うお金もないのだけれど。また私のハゲ頭にウサギの耳飾りなんて、見た目に痛いしね。

 6時半ちょっと過ぎ、ライブスタート。ステージには、セットがあるのみでバンドの姿はない。演奏はCDのカラオケ部分で行うようだ。代わりに、ステージにはダンサーが8人登場。皆ウサギの耳飾りをしている。

 ステージのバックにはビジョンがあって、そこに森の木の下で眠るほっちゃんの姿が写される。目覚めた彼女は時計を見て、「送れちゃう」と叫ぶや走り出す。そして穴に落ちてしまう。

 そしてステージセットの中央の高くなった部分に、我らがほっちゃん登場。ブルーのフレアのドレス。『不思議の国のアリス』のイメージなのだろう。

 ファンは全員一曲目から総立ち。座っていてはステージが見えない。やれやれ、立って観るのか、辛いなぁ〜とライブに慣れてない私はそう思った。それにひきこもっていて、最近めっきり体力落ちたしなぁ。何時間立ってなければならないんだろう。

 ファンは皆ペンシル状の蛍光ライトを持っている。後で分かるが、グッズ売り場に売っていたものだ。観客は集まってリハーサルでもしたかのように、同じ動作で蛍光ライトを振る。

 曲に合わせてのかけ声も、さながら80年代アイドルファンのようなかけ声で、練習したかのように大合唱である。また曲に合わせて皆一斉に飛び上がるので、床が地震のように揺れる、揺れる。耐震偽造でもあったなら床が抜けるのではないかと、心配になるほどである。

 その風景を観ていると、例えは悪いかもしれないが、ファシストとそれを讃える群衆の姿を想像してしまった。ちょっと異様なものがある。ほっちゃんは声優、それもアイドル声優であるが、アイドルとファンとの関係は、ファシストと崇拝者の関係に似ているのかもしれない。

 詳しい曲順とかは忘れてしまったので、知りたい方は熱心なファンの方のサイトにあるであろう、ライブレポートなどを参照して下さい。

 ステージは、ストーリー仕立てになっていた。コンサートツアーのタイトルに“堀江由衣をめぐる冒険”とあるが、ちょっとした冒険話になっている。前述したが、『不思議に国のアリス』のイメージを借りている。
 ほっちゃんはあるお城の舞踏会に参加するために、王様に献上する指輪を届けようとする。しかし途中で黒いケープの背高の男に、指輪を奪われてしまう。それを取り戻すためには、“マ〜ツウ〜ラの剣”が必要だという。その剣を、ライブ会場のロビーの売店で買ってくる(ちなみに1,800円也)。
 マ〜ツウ〜ラの剣で黒装束の男と戦い、勝って指輪を取り戻した彼女は、お城の舞踏会で王様に指輪を献上。宴は続く・・・といった内容。

 冒険の途中、彼女はピンクの可愛い熊の姿に変えられたりする。これは熊の縫いぐるみに別人が入って、声を彼女が当てるという趣向。声優の長所をよく生かした趣向であろう。熊になりたいというアイデアは、彼女が出したらしい。ライブのアンコール時の彼女のトークで、裏話的に告白していた。

 剣を手に入れるのに、売店まで行って買う場面は、ちょっと複雑な気分がした(ちなみにステージのビジョンでその模様が生中継されている趣向である)。ギャグなんだろうけれど、かつてお金で何でも買えると公言して、最近捕まった某IT会社社長を生み出した、現代日本の価値観が反映されているように思えたからだ。もっと夢のあるギャグが浮かばなかったのだろうか。

 ほっちゃんは数曲おきに、衣装チェンジ。着替えが大変だ。ピンクのフワフワした衣装とか、黒のシックな衣装だったり、ファンの目を楽しませてくれる。昨今オタク業界で流行のメイド服のような服もある。

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↑ステージのほっちゃん。米粒の大きさしか見えないこ
とに加え、撮影禁止なので、資料無しで思い出して描い
てみた。だから実際の衣装のデティールとは異なります。
 
 トークコーナーで、赤の可愛いメイド服のほっちゃんは、「大阪(公演)では、クルって回ると、可愛いって言って褒めてくれるんですよ」と発言。客席のあちこちからは「やって〜〜っ!」の声。ほっちゃん、クルクルと回ると、観客「ほっちゃん、可愛い〜」。彼女は、「みんなの方が可愛いよっ」というと、客席から「ほっちゃんにはかなわないよ〜」の声。

 このやりとりから、ほっちゃんは、自分がクルクル回る→ファン「可愛い〜」→ほっちゃん「みんなの方が可愛いよ」→ファン「ほっちゃんにはかなわな〜い!」というやりとりを今後のライブのお決まりにしようと提案。こう文章で書いていくと、ほっちゃんが正直ちょっと嫌な女に思えてしまうが、会場内の雰囲気はものすごく好意的。彼女の持つ可愛さとほんわかした印象、なによりコロコロ可愛らしい声が、嫌な女感を払拭して、ちょっとおちゃめさん、って感じで彼女の要求を許してしまう雰囲気を作っている。今後のライブで、ほっちゃんとファンの交流を深めるやりとりとなって行くだろう。

 2時間でひとまず幕が下りるが、ここからアンコールタイム。アンコールの大合唱でほっちゃん登場。赤いツアーTシャツを着ている。

 今回の大阪、名古屋、東京のツアーの舞台裏話などを話し始める。剣を使って立ち回りをするのだが、ダンサーの分まで剣が必要だったため、東京中の東急ハンズをめぐって、パーティーグッズの剣を買い出したらしい。だが一店舗あたりそんなに剣が売ってないので、一度に揃えるのに大変だったという。二回目に買い出しにいった時は、池袋店では、剣が売れると判断されたのか、大量に剣が売り場にあったという。

 大阪公演では、段取りで失敗も。ほっちゃんが黒いケープの男と剣で闘って、王様に献上する大事な指輪を取り戻すシーンがあるのだが、大阪ではほっちゃんが勝利したのに男役の人が指輪を持って退場してしまった。指輪を取り戻す段取りだったのが、失敗してしまい、指輪無しでその後も演じ続けるという異例の事態。ストーリー上重要アイテムなだけに、困ったことだ、その後男役の人は、色々なスタッフさんから、「指輪のことだけは忘れずに」と口を酸っぱくして言われたという。今だから話せる笑い話。舞台は生ものなんで、何が起こるか分からない。
 
 色々話は尽きなくて、25分くらいトークは続いた。その後、2曲アンコール曲を歌って盛り上がった館内。客席からの尽きることない「ほっちゃ〜ん!」の声に、終始笑顔だった彼女も、ついに涙で声を詰まらせた。わりと冷静に観ていた私もさすがに感じるところがあって、思わず「ほっちゃ〜ん!」と叫んだ。私は回りのファンみたく身振りやコールもしなかったのだが、彼女の涙に心動かされ、身体を動かし始めた。歳をとって割りと冷めた目で観てしまう私の心まで、彼女の思い、温もりが届いた感じだ。

 ほっちゃん、ダンサーさん達、スタッフの皆さん、ライブお疲れ様でした。心の固くなった高齢ヒッキーの私にも、あなた達の温かい気持ちは届きましたよ。

 ライブ終了後急いでパンフを買おうとグッズ売り場に向かうと、またしても長蛇の列。うわぁ、参ったなぁ。仕方なく列に並ぶ。お客はロビーに溢れてきたためか、我々は一端階段で7階(!!)まで上がるように係員に指示される。この会場は実は7階建てくらいの高さがあるのだ。

 2時間40分近く立ちっぱなしのうえに、ビルの7階まで競歩のようなペースで上らされる。運動不足のヒッキーは、ヒザが笑いましたよ。並ぶファンも、黙々と階段を上る。これだけキツイ階段のぼりを、集まったファンは黙々とこなす。普段こんな無茶なことはしないだろう。我々を動かす巨大なエネルギーの元は、堀江由衣なのだ。堀江由衣が、我々を7階までダッシュで上がらせているのだ。すごい、堀江由衣、29歳。

 大観衆を集め、自在に観衆を魅了するほっちゃんは、誠にすごい存在だった。目で、耳で、肌で、彼女のすごさを体感した次第だ。恐るべし、堀江由衣。

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↑ライブが終わって、会場出口付近で余韻に浸
るファン達。
posted by 諸星ノア at 22:38| Comment(3) | TrackBack(0) | アニメ・声優など

2006年02月09日

アニメDay・前編/藤子Aアニメの世界展

 今朝起きたら、偏頭痛の発作である。痛くて痛くて仕方ない。昨日の疲れからかもしれない。

 昨日はブログを書いた後、東京へ行ったのであるが、目的は二つ。杉並アニメーションミュージアムにて、『藤子不二雄A〜アニメの世界展〜』を観ることと、夜は東京国際フォーラム・ホールAにて、『堀江由衣 Second Tour 2006 “堀江由衣をめぐる冒険”』を観るためだ。元々堀江由衣=ほっちゃんのコンサートへ行く日だったのだが、どうせ東京へ行くのだから、藤子A先生のアニメ展をスケジュールに入れたのだ。交通費が一度ですむ。

 この日はアニメに関する、二つのイベントに参加する、私のアニメDayだ。

 杉並アニメーションミュージアムは、荻窪にある。JR荻窪駅からバスで数分の乗り、荻窪警察署前という停留所で降りる。そこから5分ほど歩くと杉並アニメーションミュージアムがある。すぐ前には神社がある。後で調べたら、荻窪八幡神社というらしい。都心ながら、住宅街で建物の背も低く、どこかホッとする街だ。

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↑杉並会館。この中に杉並アニメミュージアム
がある。

 杉並アニメーションミュージアムは、独立した建物ではなくて、杉並会館の3階にある。

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   ↑1階ロビーの上に掲げられた看板。

 エレベーターで3階へ行くと、いきなり会場内になる。今は観覧料が無料で、入場券のもぎる場所とかはない。

 受付兼案内場所が中央にあり、それを囲むように、日本アニメの歴史や、アニメの出来るまでの工程が分かるコーナーがある。私が着いたのは、すでに午後2時30分。ほっちゃんのライブの開場時間は午後5時30分で、会場への移動時間を込みで考えると、ここにはそんなに長居はできない。だから、企画展のコーナーを優先して観るようにする。

 階段で中4階といった場所に、企画展=藤子Aアニメ展コーナーがあった。あまりに小規模で、ちょっとガッカリしたかも。

 このミュージアムの館長は、鈴木伸一さんというアニメーター。この人は、藤子不二雄の二人や、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろうといった、漫画界伝説のトキワ荘のメンバーである。藤子A先生とは、もう50年来の友人である。そういう関係から、今回の企画展が実現している。

 有名な話だが、藤子マンガにお馴染みの、ラーメン大好きな「小池さん」は、鈴木さんがモデルである。あのモジャ頭にメガネのキャラクターは、このミュージアムのいたるところで見られる。

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↑トイレにも、小池さん、じゃなか
った鈴木館長。

 昨年藤子A先生の漫画展を観たのだが、その際生原稿などすごい量の展示を観たせいもあり、今回はことさら小規模に思えたのかもしれない。『プロゴルファー猿』の実物大のゴルフ道具があったが、藤子A漫画展で観たのでさほど驚かない。

 やはり呼び物は、トキワ荘のメンバーで作ったアニメ会社『スタジオゼロ』の、ビルの窓ガラスであろう。ガラスの表面に「スタジオゼロ」という文字が、鏡のような素材を切り取って、くっついている。ビル自体は、2003年に取り壊されていて、このガラスだけが往時を偲ぶアイテムとなっている。

 私は小学生の頃、自作の拙いマンガを藤子先生のいるスタジオゼロに送ったことがある。その時は返信用の封筒とかそんなことは考えずに、こちらの思いだけで一方的に送りつけた形だ。そしたら後日「スタジオゼロ」と印刷された封筒で、私のマンガが送り返されてきた。しかもお手紙付き!その時私は熱で寝込んでいたのだが、母が興奮してその封筒を枕元まで持ってきてくれたのを覚えている。私もとても感激した。今にして思えば、多忙な藤子先生が手紙を書くわけはなく、アシスタントの方が手紙を書いたのであろうが、それでも嬉しい。丁寧な対応だと思う。今もそのマンガと共に、スタジオゼロの封筒と手紙を大切にとってある。

 今目の前の「スタジオゼロ」の文字に、藤子両先生の姿が写っていたのだろう。もしかしたら、私のマンガことも、このガラスは見ていたのかもしれない。そう思うと、感慨があった。だが、スタジオゼロの文字に写った今の私は、醜く太った中年ひきこもり。藤子作品に育てられた者がこんなになってしまって、藤子両先生に申し訳ない気がした。

 ここにはアニメシアターがあって、企画展に関連したアニメなどを上映している。藤子アニメは、夕方の4時から上映。企画展を観ている私に、ミュージアムの係の女性から、アニメの上映があることを知らされる。時刻は3時。上映は、『いばら姫または眠り姫』と『注文の多い料理店』である。まぁ観ていくか、とアニメシアターに入る。

 平日のこんな時間だから、本当にお客は少ない。幼稚園児や赤ちゃん連れのお母さんとかが二組くらいいるだけだ。

 上映が始まると、とても“芸術的な”作品で、ちょっと退屈してしまった。『いばら姫または眠り姫』は人形アニメで、それは見事な動きをするのだが、性描写(ベットシーンなど)があって、子供に見せて良いのかちょっと疑問に思った。『注文の多い料理店』は、油彩画のような画面で、影が多く、客席の小さい子の一人は怖くて泣き出してしまい、その親子連れは出ていった。

 映画も終わって、今度はアニメライブラリーに行ってみた。ここはアニメDVDやアニメ関連の書籍が置いている。部屋の奥には、館長・鈴木さんの所蔵物が展示されている。石ノ森先生の描いた色紙とか、アニメの設定画。ディズニーのスタッフ直筆画もある。藤子A先生達との写真も飾られている。

 図書コーナーに、面白い本を発見。『京の夢、明日の思い出 あの頃のぼくに招かれて』(久里一平著/講談社刊)。2004年出版。久里一平さんは、『科学忍者隊ガッチャマン』や『ヤッターマン』などを作ったアニメ会社竜の子プロの社長さんで、アニメーターである。彼の子供時代を思い起こした、画集である。すごく綺麗で温かい絵で、こんな良い本が出ているなんて、なんで知らなかったのだろうと惜しい気がした。でもまだ新しい本なので、そのうち買おう。

 そうこうしていうるちに、また係に人に、アニメの上映を告げられる。もう4時も過ぎていて、そろそろ出ないとやばいのだが、どうやら私しかお客がいないらしい。そうすると、変な責任感が出てきてしまって、観ることにする。まぁライブはなんとか間に合うだろう。開演は6時半だし。どうせなら藤子アニメを観ておきたい。

 上映はシンエイ動画版『怪物くん』である。私がちょうど小学生の頃観ていた作品だ。第9話「おいらは風のマタクル三」、第171話「呪いの柱時計」、第47話「魔法塾へどうぞ」の3本を流す。小学生の頃以来の『怪物くん』である。

 今観ても、古さをあまり感じさせない作品だった。編集のテンポも良くて、スイスイ観られる。背景描写は、ドカンのある空き地とか今は全くない風景だったりするが、それもそんなに気にならない。それにドカンのある空き地は、『ドラえもん』に代表されるように、藤子作品には普遍的なお決まりの風景だ。

 第9話と第47話は番組初期、第171話は番組後期である。今観ると、時期によって作画が随分違うのに驚かされる。初期はわりと原作に近いタッチだが、後期はかなり独自な怪物くん像になっている。

 藤子Aアニメと、藤子Fアニメとの違いは、どこだろう。
 A先生のキャラクターの方は、全体的に活動的な気がする。F先生の作品は、どこか知的で繊細な感じ。F先生は、書斎で毎日コツコツマンガを描くタイプ。それが作品にも反映されているのだろう。『ドラえもん』などF先生作は、緻密に計算されて描かれているのがうかがえる。A先生のマンガの描き方は、オチまで考えないまま、とにかく描き進めてしまうそうだ。またA先生は、ゴルフや麻雀、お酒好き。とにかく人付き合いが好きで遊び好き。外へ外へという活動的な性格が、キャラクターに出るのだろう。怪物くんなどは、考えるより先に身体が動くタイプ。A先生の性格が反映されているのでは、と思われる。腕がトンカチに変わって、悪い魔法使いを殴りつけるなんて、すごくダイレクトでアクティブだと思う。A先生が暴力的というわけではけしてないが、とにかく行動が先というのがA先生らしさを反映したキャラであろう。

 観終わると、もう5時近く。そろそろここを出ないと、ライブに間に合わないかもしれない。もう一度館内をサラッと見て回って、杉並アニメーションミュージアムを後にした。

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↑ミュージアムのユニーク看板。

 バス停に着くと、すぐに荻窪駅行きのバスが来て、助かる。荻窪は、夕日のオレンジ色に染まっていた。これから中央線の快速で神田へ出て、山手線に乗り換え、ビジネス街・有楽町下車。日もとっぷり暮れた頃、光に包まれた近代的な東京国際フォーラムへ着いた。(後編に続く)

P.S.
 昨日、作曲家の伊福部昭さんが亡くなった。特撮ファンには、『ゴジラ』などの東宝特撮映画の胸躍るBGMで愛された方である。名前は知らなくても、ゴジラのメインテーマの旋律は誰もが聴いたことがあるだろう。91歳でした。ご冥福をお祈りします。
posted by 諸星ノア at 21:08| Comment(1) | TrackBack(0) | アニメ・声優など

2006年02月08日

発進

 ラジオパーソナリティーでオールド特撮ファンにはお馴染み、毒蝮三太夫さんは、腸閉塞で入院療養中でレギュラーの『ミュージックプレゼント』(TBSラジオ)を休んでいるが、今月20日に復帰予定だそうである。良かった良かった。まだまだ元気で「クソババァ!」と言ってもらいたい。私には、永遠に科学特捜隊のアラシ隊員だし、ウルトラ警備隊のフルハシ隊員だから、いつまでも元気でいて欲しいのだ。待ってるよ、マムちゃん。

 『ミュージックプレゼント』は、今三遊亭小遊三(『笑点』でお馴染み)さんがヨークマートからの中継をやっているが、なかなか上手い回しである。さすが若い頃街頭中継を経験した噺家さんである。 

 昨晩フジテレビで、アニメ主題歌のカウントダウン番組をやっていた。こういう番組はアニメや特撮好きでもない芸能人が多数出ているので、アニメや特撮への愛が感じられないから、盛り上がりが表面的で観ていて辛いものがある。上戸彩ちゃんが出ていたけれど、アニメにそんなに興味ないのは丸分かりだし。

 『仮面ライダー響鬼』のヒビキ役、細川茂樹さんが出ていたのだが、所在ない感じで、可哀想だった。せっかくちびっ子ファンのために出ているのに、司会の今田幸司さんは彼をもうちょっといじって欲しかった。司会がこういうジャンルに興味がないと、こういうことになるのだ。

 旧『ルパン三世』の主題歌&エンディングを歌った、チャーリー・コーセイさんが出演していたのは驚いた。私は彼を初めて見たのだ。ヒゲにサングラスで、渋い男性。ブルースシンガーだそうである。弾き語りで、「ルパン三世その2」を歌った。♪あし〜もとに〜からみ〜つく〜という歌い出しのアニメ界の名曲である。

 カウントダウンの一位は、『宇宙戦艦ヤマト』だった。ささきいさおさんが、生歌を披露。相変わらず声が伸びて、聴いていて気持ちいい。私はヤマト世代だから一位になって嬉しいのだが、これってどういう基準で選んでいるんだろうか。私は途中から観たから分からないのだけれど。『宇宙戦艦ヤマト』って30代以上の人しか、分からない作品だから。ああ、そうか、ヤマト世代の親が、ムシキング世代の子供と観るという番組なんだろうな。そういえば私も、小学生の子供がいてもおかしくない歳なんだよな・・・。

 『宇宙戦艦ヤマト』は、本当にいつ聴いても胸躍る曲だ。番組終了後、風呂場で湯船に浸かりながら、私は『ヤマト』繰り返し口ずさんでいた。随分弱々しい『ヤマト』なんだけど。ひきこもっているせいか、声も出なくなってしまったなぁ。

 というわけで、これから私はイスカンダル・・・じゃなくて東京へ向けて発進します。
posted by 諸星ノア at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ・声優など

2005年12月24日

『あらしのよるに』

 弟と姪が来た。かねてから用意していたクリスマスプレゼントを姪に渡す。彼女はまぁまぁ喜んでくれたようだ。クリスマスカードは、まだ届いてないらしい。どうなっているのか。

 午後クリスマスイブなので、車を出してお袋とケーキを買いに行く。お袋が美味しい店なので行こうと言ったケーキ屋Pについてみると、ショーケースはガラガラ。ほとんどケーキが残っていない。売り切れか?お客はそこそこ入っているのだが。なんか店内が暗い雰囲気。ケーキは予約のみなんだろうか。厨房から、パティシエは店内をボーッと覗いているだけで、追加分を作る気配はない。仕方なく、地元の不二家に行く。

 不二家はショーウインドーに一杯のケーキ。店も明るくお客も多くて活気がある。厨房でも盛んにケーキを作っている。味は並でも、やはりお店にはケーキが溢れて活気がないと、買うムードが盛り上がらないものだ。

 スーパーに寄って帰ってくると、姪が号泣していた。今日どうしても映画が観たかったと、わんわん泣いている。『ふたりはプリキュア』、『チキンリトル』、『あらしのよるに』のうちのどれかを観たいらしい。でももう午後3時半である。

 姪が泣きやまず、今から観られる映画及び映画館を弟が携帯で探す。そこで某市の映画館で、5時10分からの回で、『あらしのよるに』が観られるのが分かった。その市は、私が精神科に通っているところで、その映画館の場所も分かっている。そこで、私が車を運転して、弟と姪を乗せていくことになる。やれやれ。まぁ『あらしのよるに』は観たいなぁとなんとなく思っていた作品なので、良かったのであるが。

 車を飛ばして映画の始まる2分くらい前に、スクリーンの前に滑り込む。こんなに慌ただしく映画を観るなんて、初めてである。

 『あらしのよるに』は、メイというヤギとガブというオオカミが、嵐の夜にボロ屋に雨宿りしたことで出会い、意気投合して友達になるという話。ヤギとオオカミという、食われる側と食う側が友達になるということで、ヤギ族とオオカミ族から追われる身となる二人。

 冒頭は、メイの幼い頃の悲しい想い出から。狼の群れにメイと母が襲われ、母はメイを守るために狼に立ち向かい、食い殺されるシーンから。初っぱなからハードな展開に、恐がりの姪の反応が気になった。

 可愛い絵柄ながら、オオカミとヤギが食う食われる関係であるということを意識して描いている。冒頭のシーンも、そういう自然の摂理をハッキリ示すことの表れだろう。またそういう関係同士がはっきり描かれるから、ガブとメイの友情の特異さが際立ってくる。
 
 子供向けの映画ながら、展開はスローテンポ。山場は幾つか用意されているだが、各山場の大きさが同じくらいで、それがやや単調な印象になってしまった感がある。ぐぐっと盛り上がる感じがない。
 
 帰宅後パンフレットをパラッと読むと、監督の杉井ギザブローは、ハリウッド映画のようなジェットコースタームービーを避けたと、語っていた。それは映画を観ている時に感じていた。確かにうねような盛り上がりはなかった。ただ、もう少し盛り上げて良いかなぁと思う。それに上映時間が2時間近くあって、ちょっと長い。

 やや単調になりがちになるが、ガブ役の中村獅童の声が面白くて、場面を引っ張っていく。三枚目のユーモラスな濁った声が、絵に肌触りを与えている。

 一方メイ役の成宮寛貴の声が、絵に合っていなかった。メイはクリクリした目の可愛いヤギなので、もうちょっと幼い感じの声の方が良かったと思う。演技力もやや不安で、棒読みっぽかった。残念。

 ラスト近く、ちょっとグッと来る場面があった。オオカミ族に追われる身となったガブとメイが、雪山で遭難した時。ガブが雪山に横穴を掘って避難していたが、寒さと飢えに絶えかねた二人。メイは「私を食べて生きながらえて下さい。」とガブに頼む。「友達のためなら死んでも良い」と思ったからであった。ガブは、友達を食べることはできないと拒否する。

 ガブは外に出てしばらく歩くと、雪山に追っ手のオオカミの群れを発見。メイの「友達のためなら死んでも良い」という言葉を思い出し、ガブはメイを守るために、オオカミの群れに決死の戦いを挑む。

 二人のように、そこまで相手を思いやれるのか。私だったらできない。友達とはいえ、命まで懸けられるだろうか。どうしても我が身が可愛くなってしまう。

 二人は困難を乗り越え、新天地で二人の生活を獲得できた。これからはずっと一緒だ。ハッピーエンドで良かった反面、意地悪な大人の見方も湧いていくる。二人は若いのだから、今後パートナーを見つけて結婚とかはしないんだろうか。捕食関係の友達ということで、それぞれの一族からから追われたのだから、今後もパートナー探しは無理だろう。二人の関係は、ゲイとは違う、結婚に近い友達になった。それが二人のとって本当に幸せなんだろうかなぁ、とふと思った。

 6歳の姪は、ほぼ内容を追えたようで、ハラハラする場面は手を組んでお祈りするように仕草も見せていた。彼女のためにわざわざ車を飛ばしてきたのだから、やはり楽しんでくれないと甲斐がない。

 長時間の鑑賞と、ロングドライブで疲れて帰ると午後8時。しかし夕食がないと母に言われる。仕方ない。また車を運転して、弟と姪、父と近くのファミレスへ。私はきのこシチュー・ハンバーグをオーダー。腹が減っていたので、美味かった。

 『あらしのよるに』をあらしのように観てきて、今日は疲れました〜・・・。姪は自分家へ帰ってバタンキューだろう。でも今夜サンタさんが来てくれるから、良いよなぁ。

 というわけで、メリークリスマス、バタンキュー。
posted by 諸星ノア at 23:58| Comment(0) | TrackBack(1) | アニメ・声優など

2005年12月13日

『ゲド戦記』

 お昼から立体造形。色塗りの続き。目の部分がどうしても気に入らず、塗り直す。筆ではなく、楊子の先を細く削って、筆代わりにして塗る。それでも満足いく目がかけず、4回ほど描き直す。4度目の描き直し後、これ以上上手く描けないと断念し、妥協した。

 大方やっと塗り終わって、仮に組み上げてみたら、人物の前髪がピンっと飛ぶ。「マジかよ!?」。探してみるも、紛失。あ〜あ、3度目の作り直しである。

 全パーツにグロスポリマーメディウムを塗る。つや出しのメディウムで、保護ニスのことである。全体にツヤが出て、発色も良くなり、ちょっとは見栄えが良くなる。

 夕方、Jr,アイドル坂田知美ちゃんのグラビアが載った、『ヤングチャンピオン』の発売日だということに気づき、立体制作を中断。書店へでかけようと車に乗る。するとエンジンが全くかからない。どうやらバッテリーが上がってしまったみたいだ。「マジかよ・・・」。仕方ないので、歩いて行く。

 この冬一番の寒さという中、『ヤングチャンピオン』を買ってくる。知美ちゃんのカラーグラビアは、1ページ。それとモノクロページにインタビューが1ページ。これに320円を払うのは、ちょっともったいない気がするものの、ファンだから仕方ないか。

 知美ちゃんが13歳の頃から応援しているが、彼女ももう高校1年生。清純でロリッぽいルックスが大きな魅力だが、随分顔立ちが大人になった。アゴの部分ががっしりしてきた。身体も子供体型からふっくっら女性らしい丸みができて、お胸も発達。小さくてロリッぽい部分に魅力を感じていたので、私としては複雑な気分。でも人間だから成長は仕方ない。大人になっていく彼女を、Jr.アイドル好きの私がどこまで応援できるか、我慢くらべなところもある。

 ネットの情報で、次回のスタジオジブリ作品が『ゲド戦記』であることを知り、ビックリするとともに非常に興味を惹かれた。『ゲド戦記』は、心理学者の河合隼雄さんがユング心理学の観点から紹介している本を読み、読んでみた作品。小説の類を全く読まない私だが、とても面白かった。と言っても私が好きなのは、第一巻の『影との戦い』だけだけれど。ファンタジー映画ブームで、『ゲド戦記』も映画化されないかなぁと密かに思っていたので、ついに来たかという感じ。しかもジブリが映画化するなんて。

 本作は、どうも第一巻(ゲドが魔法使いの修行中の話)からやるわけではなさそう。ちょっとガッカリする。大賢人となったゲドと王子アレンの旅を描くお話らしいから。それと今回は宮崎駿監督の息子・宮崎吾郎氏が監督をするという。彼は、元三鷹の森ジブリ美術館の館長。アニメ制作経験はなし。大丈夫だろうか。絵コンテは自分で仕上げているというが、アニメ制作に初めて関わるズブの素人が、それも最初から監督というのは、どうなんだろう。
 
 父の宮崎監督は、大反対だったという。どうしても宮崎の息子という目で比較されるだろうから。父の作品と、どう違いを出すか、作品鑑賞のポイントになりそう。父・駿へのアンチテーゼのようなものも、作品の中に織り交ぜられると面白いかもしれない。宮崎吾郎氏は、ほぼ私と同年代(ひぇぇ汗)。同世代人としても注目である。父親の世代との視点の違いがどう出るか期待したいのだが、さて。駿と吾郎の親子関係と、自分の親子関係との比較しながら観てしまいそうだ。

 ともかく楽しみではある。
posted by 諸星ノア at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ・声優など