2014年04月29日

『武井武雄の世界展』@高島屋横浜店8Fギャラリー

 武井武雄の生誕120年を記念した展覧会『武井武雄の世界展』を見てきました。

 場所は、高島屋横浜店8Fギャラリー。



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↑会場前。

 武井武雄は、長野県岡谷市出身。大正の終わりから昭和初期にかけて活躍した芸術家で、児童向け雑誌『コドモノクニ』(1922〜1944年)の創刊にも参加し、子供のための絵=童画家として全国に知られました。

 私は直撃世代では当然ないんですけど、大人になってから、戦前の子供文化を振り返る書籍などで、その存在は知ってました。レトロで可愛い絵柄は好きです。

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↑ポスター。

 会場に入ると、客層は圧倒的に年配のご夫婦達。60〜70代くらいが多い感じ。私の親世代。

 後は、同世代の40代くらいの家族が、子連れで来てたり。

 初めて原画を観ると、その緻密な描き込みに驚かされました。

 画材としては、ペン、水彩絵の具、クレヨン。

 ありふれた画材ばかりです。まぁ今から80年くらい前ですから、今のように豊富な種類の画材はなかったでしょうけども。

 東京芸大で西洋画や銅版画を学んだだけあり、ペンの描き込みに、エッチングの技法が生かされてます。すなわち、銅板を針で削り出す感じで、ペンで描き込んでいます。

 また西洋画を学んだ結果でしょうか、クレヨンの描き込みは、寒色に暖色を重ねて描き込んで、クレヨンとは思えない、油彩のように奥行きのある、濃厚なタッチなんです。

 ありふれた画材でも、技術があれば、こんなに芸術的な絵画が生まれるんですね。すごい。

 ファンタジックで楽しい童画の数々ですが、確かな絵画力に裏打ちされ、80年以上経ってもなお、鑑賞に堪えうる生命力があります。

 話はそれますけど、マンガ家・水木しげるの展覧会に行った際、先生が16歳の頃お描きになった絵本などが展示されてましたが、まさに絵柄が武井タッチでした。大正生まれの水木少年は、武井さんなどの童画を見て、育ったのでしょう。

 武井さんは、60代、70代になっても、私家本を精力的に制作したり、なお新しいフォルムにこだわり続け、創作を続けていきます。すごい創作意欲。おもちゃも作るし、版画も作ります。羨ましい。

 戦争前に最愛の母と二人の息子を立て続けに亡くされ、その悲しみを忘れるために制作されたという、鎌倉彫の箱が展示されてます。戦後の疎開先で物資がない時代に、長女のためにそこらの紙切れで自作したトランプもあり、娘さんが今も大事にしているそう。

 深く悲しい時、食えない時代も、物作りを続けてきた、武井武雄。物を作ることが、武井さんの人生を支え、周りの人を楽しませてきたんですね。

 深い。

 会場内で唯一、撮影ポイントがありました。

 おもちゃ箱の中に人形のおもちゃが何体かいて、中心に立って撮影すると、武井ワールドの住人気分になれる趣向。

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↑撮影ポイント。

 会場を出て、グッズ売り場で、図録ゲット。

 武井さんが私家本制作をしていたことにちなんでか、手触りが良い図録の紙質です。

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↑図録。

 リアルタイムで体験してないけれども、どこか懐かしい。良質で上質な子供文化を感じられた一時でした。



※長野県岡谷市にある、武井武雄の美術館『イルフ童画館』の紹介映像です。

 イルフとは、武井さんが作った造語。

 「古い=フルイ」を反対から読んだ言葉で、要は「新しい」という意味だそうです。

 新しい絵の創造、という意気込みが込められているらしいです。

イルフ童画館(武井武雄の世界)

 
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posted by 諸星ノア at 18:20| 展覧会めぐり