場所は、高島屋横浜店8Fギャラリー。

↑会場前。
武井武雄は、長野県岡谷市出身。大正の終わりから昭和初期にかけて活躍した芸術家で、児童向け雑誌『コドモノクニ』(1922〜1944年)の創刊にも参加し、子供のための絵=童画家として全国に知られました。
私は直撃世代では当然ないんですけど、大人になってから、戦前の子供文化を振り返る書籍などで、その存在は知ってました。レトロで可愛い絵柄は好きです。

↑ポスター。
会場に入ると、客層は圧倒的に年配のご夫婦達。60〜70代くらいが多い感じ。私の親世代。
後は、同世代の40代くらいの家族が、子連れで来てたり。
初めて原画を観ると、その緻密な描き込みに驚かされました。
画材としては、ペン、水彩絵の具、クレヨン。
ありふれた画材ばかりです。まぁ今から80年くらい前ですから、今のように豊富な種類の画材はなかったでしょうけども。
東京芸大で西洋画や銅版画を学んだだけあり、ペンの描き込みに、エッチングの技法が生かされてます。すなわち、銅板を針で削り出す感じで、ペンで描き込んでいます。
また西洋画を学んだ結果でしょうか、クレヨンの描き込みは、寒色に暖色を重ねて描き込んで、クレヨンとは思えない、油彩のように奥行きのある、濃厚なタッチなんです。
ありふれた画材でも、技術があれば、こんなに芸術的な絵画が生まれるんですね。すごい。
ファンタジックで楽しい童画の数々ですが、確かな絵画力に裏打ちされ、80年以上経ってもなお、鑑賞に堪えうる生命力があります。
話はそれますけど、マンガ家・水木しげるの展覧会に行った際、先生が16歳の頃お描きになった絵本などが展示されてましたが、まさに絵柄が武井タッチでした。大正生まれの水木少年は、武井さんなどの童画を見て、育ったのでしょう。
武井さんは、60代、70代になっても、私家本を精力的に制作したり、なお新しいフォルムにこだわり続け、創作を続けていきます。すごい創作意欲。おもちゃも作るし、版画も作ります。羨ましい。
戦争前に最愛の母と二人の息子を立て続けに亡くされ、その悲しみを忘れるために制作されたという、鎌倉彫の箱が展示されてます。戦後の疎開先で物資がない時代に、長女のためにそこらの紙切れで自作したトランプもあり、娘さんが今も大事にしているそう。
深く悲しい時、食えない時代も、物作りを続けてきた、武井武雄。物を作ることが、武井さんの人生を支え、周りの人を楽しませてきたんですね。
深い。
会場内で唯一、撮影ポイントがありました。
おもちゃ箱の中に人形のおもちゃが何体かいて、中心に立って撮影すると、武井ワールドの住人気分になれる趣向。

↑撮影ポイント。
会場を出て、グッズ売り場で、図録ゲット。
武井さんが私家本制作をしていたことにちなんでか、手触りが良い図録の紙質です。

↑図録。
リアルタイムで体験してないけれども、どこか懐かしい。良質で上質な子供文化を感じられた一時でした。
※長野県岡谷市にある、武井武雄の美術館『イルフ童画館』の紹介映像です。
イルフとは、武井さんが作った造語。
「古い=フルイ」を反対から読んだ言葉で、要は「新しい」という意味だそうです。
新しい絵の創造、という意気込みが込められているらしいです。
イルフ童画館(武井武雄の世界)
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