画廊に着いたのは、午前10時40分頃。小さなスペースの画廊には、まだ人はまばら。サイン会は、午後3時から。整理券など配られていたら困るので、早く来たのだ。係の女性にサイン会への流れを訊くと、お客さんがどのくらい来るか分からないから、開催時間が近づかないと分からないという。それで時間を置いて、出直す。
今日は他にも用事があって、まずは先日作った坂田知美ちゃんフィギュアを入れるケースを買うこと。新たなフィギュア用の木製ベース(台座)を買うこと。お昼は神保町の有名なラーメン屋『さぶちゃんラーメン』をチェックすること、などなどをこなす予定。
中央線で水道橋まで移動。昼時で学生やサラリーマンで混み合う通りを抜けて、『さぶちゃんラーメン』へ。神保町通いは、予備校生からだから結構通っているのだが、この有名店は一度も入ったことがなかった。昼時いつも列ができていて、並ぶのが億劫で今日まで足が向かなかったのだ。

↑案内の看板。

↑いつも長蛇の列。
今日も店の外に数人の列ができている。15分くらい待ち、やっと入店できた。ここは、「半ちゃんラーメン」が有名らしいことは聞いていたので、それを注文する。醤油ラーメンと半チャーハンのセットのことだ。
店内は本当に狭くて、カウンター席が6席ほどで、すぐ目の前が厨房。オヤジさんと女性(娘さん?)の二人で切り盛りしている。「半ちゃんラーメン」をデジカメに押さえるべく用意しているが、恰幅の良い強面のご主人で、しかも彼の真ん前の席なので、「そんなことされちゃ困るよ」と言われるかと内心ビビッていた。
コンロは二つしかなくて、一つは中華鍋にチャーハンが常に入っており、注文するたびにそこから皿に盛る。残りのコンロには、面を茹でる鍋。時々タバコをふかしながら、黙々と面を茹でるご主人。禁煙の概念のない、昭和なお店だ。
いよいよラーメンが来たので、カメラを構えると、「チャーハン来てから一緒に撮ってよ」とご主人。撮影に非常に協力的だった。実はここに来る前に、詳細は言えないがちょっと対人的に落ち込むことがあったので、このご主人の暖かい言葉が嬉しかった。人情に触れたというか。
半チャーハンも来て、改めてデジカメで撮影。そしてラーメンに向かう。麺は細麺で、チャーシュー一枚とメンマという、シンプルな昭和の醤油ラーメンのようだ。シンプルすぎて、それほどパンチはない感じ。ラーメンから、チャーハンに食を進めると、これは美味い。つねに中華鍋にチャーハンがあったのは、お焦げができるためなのか。お焦げが香ばしくて、美味い。それとショッパ味のあるコマ肉(豚肉?)が効いている。チャーハンを口に含みながら、ラーメンのスープを飲むと、これが絶妙なハーモニーとなった。口に中で香ばしいチャーハンが、スープでほぐれて、二つの味がからまる。「半ちゃんラーメン」が定番になっているのが、分かる気がする。

↑半ちゃんラーメン。
ラーメンの麺は、やや少なめなので、短時間で食べられるので、麺が伸びきることがない。最後までシコシコとした感じを残した。ただ、このスープには、麺よりチャーハンが合う気がした。
ごちそうさま。650円なり。この安さも、長年人気の秘密だろう。また機会があったら来てみたい。昭和なご主人の、人情味の「半ちゃんラーメン」であった。ご主人の心遣いと、味に、?,ち込んだ心が救われた。

↑こんな感じのご主人。
このまま神保町を去れるほど、意志は強くない。中野古書店漫画部に足を向けた。
今は特価本のセール中で、早速『小学館入門?(科シリーズ176 カラー版妖怪まんが 鬼太郎』( 水木しげる)を500円でゲット。それと『魔太郎がくる!!』第12巻(藤子不二雄/秋田書店)を見つける。第11巻まで持っているので、ちょうど良かった。状態は並よりちょいと?,ちるけど、800円だし、ゲットする。他にも色々あったけれど、我慢して今日はこれだけで。
その足で、今度は書肆アクセスへ。『昭和プロレスマガジンVol.8』を求める。昭和50〜51年の新日本プロレスの研究本。
今度は御茶ノ水駅から秋葉原へ。ヨドバシカメラのオモチャコーナーへ行き、フィギュア飾りケースを所望。ここで木製ベースもあるかと店員に聞いたら、ないとのこと。ラジオ会館のボークスへ行こうかと思ったが、腕時計を見たらもう2時。そろそろ紀伊国屋画廊に戻らないと、サイン本が買えないかも。それだと今日の外出の意味はない。

↑案内ポスター。
2時半頃画廊に戻ると、すでに開場には河童さんがいらしていた。わりと小?)な方だ。各界の著名人から送られた花を撮影されていた。送り主を見ると、黒柳徹子、ピーコ、市川正親、高畑淳子など、そうそうたるメンバー。河童さんの交流の幅を感じる。でも中にいる数人のお客は私も含め、河童さんに気づかぬふりをしている。サイン会まで、交流のけじめをつけようとという、大人の配慮だろう。
午前中にも展示物を観たが、改めてじっくりと鑑賞。私としては手描きルポの『河童が覗いたシリーズ』の生原稿が気になる。原画は、B4くらいの大きさで、とても大きな紙に描いているのに驚く。あの細密画は、このくらい大きく描かないと、デティールに凝れないことを納得した。それに大きく描いて、印刷時に縮小すると、見栄えが良くなるだろうし。
ちなみに『覗いたシリーズ』は、丸ペンにインクで描いている。実際使っているペンが展示されていた。丸ペンで、太い線から細い線まで描き分けている。原稿は、ケント紙にブルーで文字原稿の罫線がはいったようなものを使っているものも見受けられた。
舞台の家並みなどの、イラスト原画なども興味深く拝見。これもまた非常に緻密に描いている。これを元に、舞台の大道具の画家達が、実際の舞台装置を作るのだ。河童さんの描いた絵の、25倍の大きさの舞台装置となる。
書き文字も、とても丁寧で上手い。文字の位置は、罫線が引いてあるかのように縦にも横にも揃えられているのがすごい。『覗いたシリーズ』はまだそういうスタイルで書いているのかと納得するが、舞台美術のデザイン画に添えられているスタッフへの指示の文章も、同じように文字が縦にも横にも揃っているのがすごい。普段から、そうとう几帳面という感じがした。
開始予定の3時に15分ほど早かったが、河童さんの好意で、早めにサイン会がスタートされた。私は二番目にサインをして頂く。サインは、会場内で売られている書籍にするのであるが、売られていたのはほとんど持っている物。だけど、サインしてもらいたいから、『河童が覗いたインド』(講談社文庫)と『河童のスケッチブック』(文春文庫)を買って、サインをお願いした。
それと写真撮影の許可を求めると、河童さんは快諾。「サイン中に顔を上げるから、その時写してね」とおしゃるので、一枚パチリ。すると、「一枚で良いのかい?それとフラッシュ炊かないで大丈夫?」と気遣って下さり、顔をグッとあげて照明が顔に当たるようにして下さった。そして二枚目をパチリ。

↑妹尾河童さん。
「(イラストの)原画が大きくて、ビックリしました。もっと小さく描いておられると思った物ですから。」と私が言うと、「大きく描いて、小さくする仕事と、小さく描いて大きくする(舞台の)仕事をしているんですよ。」と大きな声で語って下さった。
私は緊張していて、今思うと下がる時にお礼を申さなかった気がするのだが、失礼してしまった。でも気さくで、とてもエネルギッシュな河童さんだった。サインと写真、ありがとうございました。
さて木製ベースであるが、池袋のボークスへ足を伸ばし、ようやくゲット。駅から遠いから、難儀だな。76歳の河童さんのパワフルさが、羨ましい。今日はさぶちゃんラーメンのご主人といい、元気なオジサンを覗き、触れあった一日であった。私はと言うと、ほうぼう覗き、歩き疲れてへとへとで、帰りの電車でコクリコクリとしてしまう情けない30代である。