2013年02月18日

『あの頃マンガは思春期だった』

 『あの頃マンガは思春期だった』(夏目房之介著/ちくま文庫)を読了。


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↑表紙。

 夏目房之介は、1950年生まれ。マンガコラムニスト。

 マンガ作品を批評する際に、その作品を実際にペンで忠実に模写し、その体験から得られた感覚から、作者の意図を読み取り、その批評をしていくスタイルを確立。

 90年代には、NHKBSで放送された『BSマンガ夜話』のパネラーとして、有名に。私はこの番組で、夏目さんを知りました。

 また文豪・夏目漱石の孫であり、本書に書かれてますが、そのことが少年時代からひどく重荷だったそうです。

 本書は、夏目さんの高校時代から、大学を経て、社会人になるまでの精神の軌跡を描きつつ、その時々で読んでいたマンガを紹介しております。

 夏目さん曰く、自分が思春期から大人になる心の様相と、マンガが少年物から青年マンガが派生していく過程とリンクしているそうで、自分史を描くことが、その時代のマンガの空気感を証言できるのではないか、ということです。

 マンガ好きの夏目少年が、マンガ家になりたいと決意し、マンガを描いていきます。夏目漱石の孫という看板が重荷になり、斜に構える子だったようです。

 一方でオナニーにふける空想癖があるとか、大学時代は安保闘争という革命に夢を抱き、破れ、恋人と同棲結婚する等々、かなり赤裸々に自身の青春時代を語っています。

 テレビで観る穏やかな夏目さんからは想像出来ない、波乱の青春で、正直驚きました。

 マンガの評論が面白いことは言うまでもないですが、マンガ好きの「地に足の着かないおぼっちゃん」が、現実を目の当たりにして傷だらけになりながら、自分の足で歩き始める=大人になるまでの精神史が、興味深い。

 大人になることの壮絶さが、自分にも思い当たり、身につまされてました。まぁ、私の場合、大人になれずに、挫折してしまいましたが・・・。

 本には、高校時代に夏目さんが描いたマンガが小さく載ってますが、めちゃくちゃ上手い。でもご自身では絵が下手すぎで、話を作る根気もないと、ストーリーマンガに挫折。

 編集者の仕事をしながら、マンガと文章の中間、つまり絵を描くこと=模写を通じてマンガを分析するスタイルを編み出していきます。

 それは夏目さんが、現実生活に、自分の生きる道を探り当てることであり、青年から大人になるために、現実に適応した結果でもありました。

 こういうところに私は興味を覚えたし、ということは私もまた44歳にして、長い思春期が終わろうとしているのかもしれません。


 この本は、2000年発行ですが、私は最近ブックオフで拾って購入。

 すごく面白い本で、ブックオフで買ってしまい、夏目さんに申し訳なくなる。

 とても良い出会いをした本でした。


※プロレスです。

 現在何度目かのブレイク中の大仁田厚。

 彼の最初にブレイクしたFMW時代のデスマッチです。引退ツアー中の試合ですね。

 1995年5月4日、愛知県武道館にて。世界ブラスナックル選手権試合、ノーロープ有刺鉄線バリケードマットデスマッチ、時間無制限1本勝負、ミスター・ポーゴ(王者)vs大仁田厚(挑戦者)。

 今見直しても、面白い。すごい技はないですが、動きに緩急があり、試合のリズムが良い。

 ポーゴの持ち込む凶器が前振りで、最後には大仁田の武器になるというオチが、観ていて心地良い。

FMW - Atsushi Onita vs Mr. Pogo (5/4/95) No Rope Barbed Wire Double Hell Death Match


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posted by 諸星ノア at 20:13| 読書感想(マンガ含む)