2012年10月02日

『内側から見たノアの崩壊』

 『内側から見たノアの崩壊』(泉田純著/宝島社刊)を読了。

 プロレスリングNOAHを解雇されたプロレスラー泉田純が、詐欺師・成田眞美がNOAHの大スポンサーとして関わった経緯と逮捕までの過程と、同時進行で泉田が彼女の詐欺に引っかかり、莫大な借金を背負ってしまった過程を語る。



 この本は、泉田選手が『別冊宝島』で語った内容を元に、加筆して書籍化したもの。

 『別冊宝島』の方は、早々に売り切れてしまって、私は読んでいない。

 プロレス書籍で、従来のいわゆる暴露本は、真剣勝負ではないということを扱うものが多いですが、この本は、そういう類ではない。

 詐欺師がNOAHの大スポンサーとして食い込むという、犯罪が絡んだ話です。ある意味、深刻な内容です。『週刊プロレス』の良いことばかり書いてある雑誌を読んでいて分からない、NOAHの暗部。

 その詐欺師・成田眞子と結託していたのが、NOAHのゼネラルマネージャー(当時)の仲田龍氏であり、泉田選手は仲田龍氏がNOAHの低迷の元凶になっていると指摘する。

 泉田選手は、中堅レスラーで、本人曰く「やられ役」のレスラー。その彼は、実に冷静に、団体の内部事情を観察していたことに、驚きを感じます。

 やられ役だからこそ、仕事としてプロレスの中身を、ちゃんと理解したのだと思われます。

 昨年あたりから、NOAHのアングル(リング上の抗争の仕掛け)で、KENTA率いる軍団NO MERCYと、仲田龍派閥の丸藤正道(副社長)率いるBRAVEの対決が提示されていますが、この本を読むと、あれはフィクションではなくて、団体内にリアルに存在する派閥抗争を元にしていることが分かります。

 成田眞子のマネー攻勢の恩恵に浸っていたのは、実は仲田龍一派のレスラーでもあり、仲田一派ではないものの泉田選手もその中にいたわけですが、実はその金は、眞子が全国のお年寄りから詐欺で巻き上げたお金でありました。

 NOAHは、三沢光晴(故人)や仲田龍が中心になって、全日本プロレスから独立して出来たプロレス団体。泉田選手は、ジャイアント馬場がいた頃の全日本プロレスでは、こんなうさんくさいタニマチを頼ることはなかったと語ります。ジャイアント馬場の示したモラルがなくなったと指摘してます。

 それと同時に、馬場全日時代にあったレスラーの上下関係の規律が、NOAHではゆるんでしまい、団体内が統制とれない結果となり、具体的には新人がまったく育たない現状になったと語っている。新人いじめがかなり酷いらしい。

 NOAHが犯罪マネーに染まったことと、団体の低迷(けが人多い、客足激減、新人0)という惨状の元凶は、ほぼ仲田龍氏であると、決めて書いてあります。

 仲田龍氏と言えば、私は彼の著書『NOAHを創った男―三沢光晴の参謀』(ベースボールマガジン社刊)の発売記念トークショーで、仲田氏を実際に見たんですけど、サインをしてもらう際に「頑張って下さい」と声をかけても、彼は私に一瞥(いちべつ)もせず無言だったことに、違和感を感じてました。

 そんな感触があったので、泉田選手の本で語られる仲田氏の言動を読むと、さもありなんと感じました。

 泉田選手が、私怨を込めて書いた本書ですが、彼の感情論を抜きにしても、NOAHの会社が傾いているのは、観客動員の激減や新人レスラー皆無からも分かります。やはり彼の指摘は、傾聴に値するでしょう。

 NOAH内で仲田氏に不満を感じているレスラーならば、NOAHを出ても良いのではと感じてました。しかし本書に寄れば、フリーの泉田選手がオファーのあったリングに上がろうとしても、仲田氏が泉田をリングに上げないようにと、裏で嫌がらせをするらしい。

 NOAHのトップレスラーで、反仲田の秋山準選手が、団体を出て物を言うようになれば、まだ状況は変わるような気がします。でも秋山選手は、「団体結成当時のNOAHに戻したい」と公言してますから、難しい。同じく反仲田の小橋建太選手は、満身創痍で往事のファイトは無理で、セミリタイヤ状態ですし。

 ただ自浄作用があるとは思えないし・・・。

 でもまぁ、新人がいないし、今のトップ選手があと数年で軒並み40代、50代になるでしょうから、遠からず立ちゆかなくなるでしょうね。

 日本社会の縮図のようですね。若者が働きやすい職場環境にならなければ、誰もその会社に入ろうとしないでしょう。

 私は馬場全日本が好きだったし、その流れをくむNOAHも好きな団体でしたけど、今は複雑な気持ちですね。泉田選手には、なんとか生き抜いて言って欲しいと願うばかりです。


※プロレスです。

 プロレスリングNOAH、2012年7月22日、札幌テイセンホールにて。マイバッハ谷口vsTAJIRI。

 TAJIRIは、元WWEのスーパースター。マイバッハ谷口は、KENTA率いるNO MARCY所属の、マスクマン。正体は、NOAHの若手・谷口 周平。

 大人しい谷口が、ヒールのマスクマンになったわけですが、安全なヒールですね。まったく危険な香りがしないヒール。動きに、ヒールとしての想像力がない。

 対するTAJIRIは、マイバッハを大きく上回るヒールの凄み、変幻自在の動き。役者が違いますね。

NOAH 22.07.2012 - TAJIRI vs MAYBACH Taniguchi


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posted by 諸星ノア at 20:58| 読書感想(マンガ含む)