2010年01月18日

『東京見物』刊行記念/和田誠トークショー3

 『東京見物』刊行記念/和田誠トークショー2からの続きです。

 イラストレーター和田誠さんのトークショー。司会は、講談社のオザワ氏。

 絵本『東京見物』のイラストを、プロジェクターで投影しながらの、トークです。

和田「続いては、新宿の東口ですね。昔の『東京見物』の新宿と、同じようなアングルで描いてます」
和田「ボクの感覚だけど、新宿って、昔も今も変わらない印象です。街の匂いというか、そういうのが、今も昔も新宿っぽい」
オザワ「和田さんにとって、新宿はどんな街ですか」
和田「映画の街かなぁ。駅のそばの武蔵野館に、通ったし。小六の頃、そこで漫画映画の『ガリバー旅行記』を観たんです。戦後公開されたカラー外国映画の2本目なのね。当時は日本に、字幕をフィルムに焼き込む技術がなくって、字幕なしの映画でした」
オザワ「お一人で観たんですか?」
和田「いや、学校で見に行ったの」

和田「銀座のデザイン会社に勤めている頃は、新宿に日活名画座というのがあって、そこのポスターを描いてました。その頃映画1本、40円だったかな。銀座に勤めていた9年間、ずっとそのポスターをやったからね。日活名画座は、その後、丸井になっちゃったけど」

オザワ「当時和田さんは、飲むのは新宿だったんですか?」
和田「いや、銀座に勤めていた頃は、銀座か、あとは六本木だった」


 東京ドーム内の絵が投影される。巨人戦の模様。

和田「今の絵は、東京ドームを描いてます。昔のは、国技館。大相撲ね。昔の土俵には、四方に柱があったんだね。当時は、野球はあったのかな?」
オザワ「後楽園球場が昭和12年にできますから、ちょうど絵本の発行年だったので、取り上げるのが間に合わなかったんでしょうね」

和田「ボクの描いたドームの絵で、外野の広告が多くて大変だった。それと、広告の文字をハッキリ描いちゃうと、画面の端に見切れた会社の広告に悪いから、全体的に少し簡単にそれらしく描いてます」

 代々木公園の絵。

和田「昔のは、春の隅田公園なんだけど、ボクのは代々木公園を描きました。ボクが代々木上原に住んでいるので、親しみのある公園なので、選びました。

 代々木公園はね、ホームレスが面白いんだ。洋書の分厚いのを読んでいるホームレスがいたり、手帳に細かい文字をびっしり描き込んでいる人がいたり。

 絵にはパンダの顔が描いてあるんだけど、ちょうどそういう着ぐるみを被った人がいたんだよ」

 JR御茶ノ水駅を、昌平橋から見た構図の絵。

和田「昔と今の、御茶ノ水駅の対比です。昔の絵本(『東京見物』)を持って、ここを通ったら、あの頃とほとんど変わってないので、感動して描きました」

 羽田空港に、ジャンボ機が降り立つ場面の絵。

和田「これも昔との対比で、羽田空港の今と昔です。昔は、羽田飛行場って言ったのかな。昔のは、金持ちらしき人が、飛行機に乗ろうとしている絵だけど、こんなことあったのかな?」
オザワ「当時は、定期便がなかった時代ですからね」
和田「この時も、昔の絵の構図と同じところから描きたいってリクエストして、羽田の空港事務所に無理を言いました。そして、それらしいだろうというところに案内されたんだけど、行ってみると、そうなかなぁ?って場所でした(苦笑)」
オザワ「(描いたジャンボ機の航空会社が)JALじゃなくて良かったですね(苦笑)」
和田「ANA、でね(苦笑)」


 葛飾柴又の商店街の絵。

和田「昔のは築地の本願寺だけど、ボクのは柴又を描きました。画面右側のお店は、寅さん(映画『男はつらいよ』)の実家に使われているお店だよね。ここも看板が多くて、描くのが大変でした。こう見てくると、この絵本では随分看板描いているんだよね。随分宣伝しているわけだ。まぁ、架空の店名にしても、つまらないしね。こういうのは、NHKは、嫌がるんだよね」
オザワ「NHK出版では、描けないでしょうね(苦笑)」

 寅さんの銅像(ラストページの絵)

和田「これの写真を撮っている時、ちょうど銅像の下に、外人の子供二人がいたのだよ。それで描き入れてます。

 渥美清(寅さん)は、知り合いだったし、それが銅像になるなんて、不思議な感覚だね。日本映画で、銅像になった役者さんって、いるの?黒沢映画で世界的に有名な三船敏郎でさえ、銅像になってないからね。渥美さんというか、寅さんが、特別な存在なんだろうなぁ。

 最後を寅さん(の銅像)にしたのは、旅が日本橋(の狛犬)から始まって、この銅像が東京の端っこにあるんで、旅の終わりにちょうど良いかなって思ったのです」


 こうして、『東京見物』のイラスト解説トークは終わり、今度は質問コーナー。

 事前にお客に質問用紙が配られて、和田さんに質問できるようになってました。

 でも、時間の関係か、質問は1つになってしまったようです。

オザワ「質問からですが、一番多かったのが、和田さんが東京で一番好きなところはどこですか、というものなんですがー」
和田「懐かしいという意味では、9年間勤めた会社のある銀座。原宿も、懐かしくて好きですね。昔はトロリーバスが走っていて、のんびりした風情のあるところだった。今の竹下通りの喧噪を含めても、好きですね。竹下通りの路地を一本入ったところに東郷神社があって、そこへ行くと、(喧噪が嘘のように)人通りがまったくなくて、面白いです。

 あそこらは、ボクが仕事場へ通う道なんです。家から仕事場まで、45分歩いているんです。ボクはゴルフとかテニスとか、スポーツを全くやらないんで、これくらい運動しないとね」


オザワ「それでは最後に、年が明けたこともあり、今年の抱負とか今後のご予定などをお話下さい」
和田「昨年、尊敬するイラストレーターの宇野亜喜良(うの・あきら)さんが、モノクロの挿絵ばかりを集めた画集を出したのね。普通画集だと、カラーを多めにとかあるんだけど、モノクロだけは珍しい。その出版社から、第2弾として、モノクロの画集を出さないかと言われているんです。ボクは、新聞小説の挿絵はやってないけれど、三谷幸喜のエッセイの挿絵とか毎日新聞に挿絵を描いているので、そういうのを集めて画集にしようかと思っています。

 それと9月に、「たばこと塩の博物館」(公式HP)から、個展を開けと言われているので、その準備をしないといけないです。ボクは、東京イラストレータズ・ソサエティに所属しているんだけど、それの会員200名くらいいて、その展覧会もそこでやったんです。でもその200人分の展示を、今度はボク一人で埋めないといけないので、大変です。全部は描き下ろしできないんで、過去の作品からも選んで展示する予定です」


オザワ「というわけで、短い時間ではありましたが、和田さん好き、東京好きな方々が集まっておられるので、楽しんで頂けたと思います。この絵本で、また東京の楽しみが増えてくれれば良いなと思っております。今日は、ありがとうございました。和田さんに、拍手をお送り下さい」

 万雷の拍手で、トークショーは終了。時刻は、20時くらいです。

 いったん休憩を入れて、和田さんのサイン会。『東京見物』の、和田版の方に、サインを入れてもらえます。

 サインは、整理券の番号順。私は早めに並んだので、6番。

P1090664S.gif
↑整理券。


 1〜10番までが呼ばれて、和田さんのおられる机に行きます。順番内ならば、順不同らしく、私は一番最初に、サインを入れてもらいました。

 ローマ字で、「WADA MAKOTO」とだけ入れるシンプルなものなんで、和田さんにお願いして、日付も入れてもらいました。サインの場所は、『東京見物』2P目の右下です。

P1090663S.gif
↑サイン。

 サイン会は、高速進行で、どんどん進んでいます。私は家が遠いので、早々と退散。


 前回、青山ブックセンターで行われた「和田誠の質問箱」に参加して、トークショーは2回目でしたが、今回は、司会進行役がいて、軽く仕切りがあったので、正直助かりました。前回は進行役がいなかったので、すごくイベントが長くて、正直辛かったというか。

 そういってしまうと、和田さんに失礼なんですけど。

 でもやっぱり、人間が座ってただ話を聞くにも、1時間くらいが集中力の限度だと思うので、やはり司会が必要でしょう。

 『東京見物』ですけれども、和田版のそれは、すごく色鮮やかに、今の東京が描かれているんですけど、絵に仕掛けがないというか、語弊のある言葉かもしれませんが、すごくフツーの風景画なんです。

 でも今回和田さんのお話を伺って、1枚1枚に込めた意味や絵の狙いを聞くことができて、大変面白かったです。何気ない絵に、ものすごく意味があったんだなって感じました。

 トークショーを聞く前と聞いた後では、絵の見方が全然違ってきます。そのくらい、意義深いトークショーでした。

 『東京見物』をお買い求めになった方で、トークショーに残念ながら行けなかったという方。

 拙い私のイベントレポートなんですけど、和田さんのお話を読んで下さると、また絵本の見方が変わってくると思います。手前味噌ですけど、参考にして下さったら、幸いです。

 今年は、画集も出るらしいし、9月には個展もあり、和田誠ファンには、嬉しい年になるでしょうね。

 和田誠さん、貴重なお話、長時間ありがとうございました。講談社のオザワさんも、お疲れ様でした。

ー『東京見物』刊行記念/和田誠トークショー(終)


※中原理恵のナンバーから、「東京ららばい」(1978年)をどうぞ。

 作詞/松本隆、作曲・編曲/筒美京平。

東京ららばい・・・中原理恵

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この記事へのコメント
JALが今日で会社更生法を申請しますね。事実上の倒産ですね。まさかGMとクライスラーのように突然JALが倒産するとは思いませんでした。不景気はこれからです!
Posted by さかい at 2010年01月19日 09:18
>さかいさん
 不景気は、まだまだ続きそうで、怖いですね。
Posted by 諸星ノア at 2010年01月20日 21:37

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