
↑川崎市民ミュージアム。
ひきこもりになってから、どうものび太がひきこもり予備軍のように思え、それが悪い意味で自己同一視してしまい、好きだった『ドラえもん』があんまり好きではなくなったけれど、藤子・F・不二雄先生が好きなので、行ってみた。
私は生原稿を楽しみにしていたのだが、展示量が少なめなのが残念であった。数は不満だったが、原稿はさすがプロの仕事。綺麗にキッチリ描かれているので、感心する。私はカチッとした輪郭線の絵を描くのだが、その影響はやはり二人の藤子不二雄先生の影響だろうと思う。
藤子F先生は、ペン入れは人物の顔のみで、身体はアシスタントが入れていたそうだが、初期原稿では先生とアシスタントのペンタッチの違いが分からなかった。後期の作品だと、アシスタントの絵だなというのはなんとなく分かるのだけれども。夢がない見方かな。
展示作品は、初期の『ドラえもん』の原稿の割合が多く、楽しい。私が好きな『ドラ』は、初期のワイルドな味わいのあった頃(単行本だと6巻くらいまでの)が好きだから。タイムマシンを使った時間ネタの「ドラえもんだらけ」の原稿が展示されていたが、思わず顔がゆるんでしまう。面白い。

↑「ドラえもんだらけ」扉。
「おばあちゃんの想い出」の一場面もあったが、泣ける。のび太を愛した、本当に可愛いおばあちゃん。祖母を亡くしたせいかもしれないが、よけいグッと来る。
それと「さようならドラえもん」。ジャイアンとのケンカに、ボロボロになりながら粘り勝ったのび太。彼をおぶって帰るドラえもん。ドラの目には、滝のような涙。ドラえもんという庇護者から自立しようとするのび太に、今の自分を重ねやすい。自分も本当は、そうあらねばならないのだな・・・。この1ページは、ぜひ手元に欲しい。複製原稿化して頂きたい、私の中の名シーンである。
のび太はドラえもんの秘密道具を使って、一時は上手くいくが、最後には失敗して終わる。このパターンを藤子F先生が崩さなかったのは、道具や他人に頼ってはダメだということを、繰り返し読者に訴えたかったのだと思う。秘密道具で常に成功し続ければ、のび太は確実に堕落する。のび太が読者の代表でもあるから、読者にも良い影響はないだろう。最終的には、ドラえもんから離れないといけない。子が親から自立していくように。藤子F先生には、長く生きてドラえもんとのび太の別れを、今一度描いて欲しかった。
現代美術の作家とドラえもんのコラボレーション作品も展示されていたが、いらないと思う。いずれも、ドラえもんや藤子F先生への愛情が感じられなかったから。思い入れのなさが、作品の熱を奪っている感じ。
それでも唯一良かったのは、写真家・蜷川実花さん(演出家・蜷川幸雄さんの長女)の作品。「ドラえもんとデート」というタイトルで、蜷川さんがドラえもん(着ぐるみ)と、公園などで楽しそうにデートする姿が活写されている。ドラえもんへの愛情が、ダイレクトによく伝わってきて良かった。女性は肉感的というか、愛の対象と直接触れあえることが大事なのかと感じる。
2時間以上かけて来た思い入れがあるので、展示数は少ないのが残念だったけれども、『ドラえもん』が好きだった頃の自分に戻れたので、良かったかな。素直だった頃に。
それと、この展覧会独自の図録がないのが残念だったが、代わりに平成元年にここで行われた「藤子不二雄の世界展」(やってたの知らなかったよ〜)の図録が安く売られており(400円)、ゲットできて良かった。


↑実物大(?)どこでもドア。
※懐かしの、日本テレビ版『ドラえもん』をどうぞ。
日本テレビ版『ドラえもん』
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