特撮作品のコミカライズというのは、なかなか面白い物が少ないのだが、梅図版の『ウルトラマン』は、個人的にかなりお気に入りである。

↑梅図かずお『ウルトラマン』より。
梅図さんといえば、ホラーマンガの第一人者だが、『ウルトラマン』も見事にホラー色満載、楳図テイストに染まっている。特撮のコミカライズだと、映像作品=原作と違うとファンによっては拒否反応を起こしてしまう。マンガ独自色を出すと、原作のファンの間で賛否が分かれやすいのだ。しかしこの作品は私的には、梅図版ウルトラマン大いに有りだな、という感想なのだ。
物語も、ダイナミックでドラマチックになっているし、怪獣の描き方も躍動感に満ちている。ウルトラマンという作品世界に食われない、楳図さんの作家としてのパワーの大きさが感じられる。
そこで、梅図版のウルトラマン・ソフビである。制作は、アートストーム。


大きさは、約250o。私には懐かしいサイズ。昭和40年代前半までは、ソフビと言えばこのくらいの大きさだった。肌の銀色部分も、ねずみ色、赤部分も口紅のような赤。体型も、微妙に昔のソフビ体型。それでいて、造詣は細かく、梅図さんの描くウルトラマンの雰囲気をよく再現している。特に、顔。

マンガを観てもらえれば分かるが、鼻の下に線が入っており、人が仮面を被っているかのようなデザインで、ソフビでもそれをよく再現している。
ウルトラマンの初期は、ゴム製のマスクで、顔にシワがよっていた。いわゆるAタイプというマスク。私の解釈だが、Aタイプの口近くのシワを梅図さんがマンガにする場合取り入れ、そのシワのラインが鼻から下を分かつデザインに発展して、仮面状になったのだと思う。
口元が肌色になっているのは、『フィギュア王』誌上限定版の特徴。通常発売分は、ねずみ色になっている。楳図版ウルトラマンが掲載されていた『週刊少年マガジン』において、連載初期のカラーイラストで口元が肌色だったことを、誌上限定版は再現しているのだ。
放映当時の1966年頃は、ビデオなども勿論なく、TBSの試写室に行ってフィルムを観て、ウルトラマンから怪獣、科学特捜隊のコスチュームなど覚えて描く状態だったと梅図さんは回想している。だから、映像と違ってしまうのは、仕方がない。それだからこそ、こんな独自の面白いウルトラマンが出来上がった。ビデオも写真資料も豊富にある今では、作り得ないデザインであり、味わいとなっている。
しかし顔のシワの部分に着目するとは、怪奇マンガ家らしい、着目点というか。マンガ絵というのは、老人などは別にしても、シワというのは省略しがちな部分だ。楳図さん流のリアリズムだったのだろうと思う。ともあれ、シワを描き込んだお陰で、希有なウルトラマン像となり、それゆえソフビにもなったのだろう。シワのお陰で、シアワセな結果となった。
数年前には、桑田次郎のマンガ版『ウルトラセブン』がソフビ化されて(制作はマーミット)、嬉しくて幾つか買った。梅図版のウルトラマンもいつか出ないかと思っていたが、ついに登場した。そういう意味で、良き時代だ。こうなったら特撮コミカライズの大御所・一峰大二さんの描いた『ウルトラセブン』、いや、『ミサイルマンマミー』を出してもらうしかない(マニアックで、皆分からんがな)。
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見事に楳図かずおに染まってますよ、『ウルトラマン』。今は古書店で探さないと読めない作品なのが、惜しいです。本当に面白いんで、復刻版を是非出して欲しいです。