2006年11月02日

シワでシアワセ

 マニアックな時代になったというか、梅図かずおさんが描いた『ウルトラマン』を元に制作されたソフビ人形が出る時代。昨日、注文していたその梅図版ウルトラマン・ソフビが届いた。『フィギュア王』誌上限定バージョンである。

 特撮作品のコミカライズというのは、なかなか面白い物が少ないのだが、梅図版の『ウルトラマン』は、個人的にかなりお気に入りである。

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↑梅図かずお『ウルトラマン』より。

 梅図さんといえば、ホラーマンガの第一人者だが、『ウルトラマン』も見事にホラー色満載、楳図テイストに染まっている。特撮のコミカライズだと、映像作品=原作と違うとファンによっては拒否反応を起こしてしまう。マンガ独自色を出すと、原作のファンの間で賛否が分かれやすいのだ。しかしこの作品は私的には、梅図版ウルトラマン大いに有りだな、という感想なのだ。

 物語も、ダイナミックでドラマチックになっているし、怪獣の描き方も躍動感に満ちている。ウルトラマンという作品世界に食われない、楳図さんの作家としてのパワーの大きさが感じられる。

 そこで、梅図版のウルトラマン・ソフビである。制作は、アートストーム。

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 大きさは、約250o。私には懐かしいサイズ。昭和40年代前半までは、ソフビと言えばこのくらいの大きさだった。肌の銀色部分も、ねずみ色、赤部分も口紅のような赤。体型も、微妙に昔のソフビ体型。それでいて、造詣は細かく、梅図さんの描くウルトラマンの雰囲気をよく再現している。特に、顔。

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 マンガを観てもらえれば分かるが、鼻の下に線が入っており、人が仮面を被っているかのようなデザインで、ソフビでもそれをよく再現している。

 ウルトラマンの初期は、ゴム製のマスクで、顔にシワがよっていた。いわゆるAタイプというマスク。私の解釈だが、Aタイプの口近くのシワを梅図さんがマンガにする場合取り入れ、そのシワのラインが鼻から下を分かつデザインに発展して、仮面状になったのだと思う。

 口元が肌色になっているのは、『フィギュア王』誌上限定版の特徴。通常発売分は、ねずみ色になっている。楳図版ウルトラマンが掲載されていた『週刊少年マガジン』において、連載初期のカラーイラストで口元が肌色だったことを、誌上限定版は再現しているのだ。

 放映当時の1966年頃は、ビデオなども勿論なく、TBSの試写室に行ってフィルムを観て、ウルトラマンから怪獣、科学特捜隊のコスチュームなど覚えて描く状態だったと梅図さんは回想している。だから、映像と違ってしまうのは、仕方がない。それだからこそ、こんな独自の面白いウルトラマンが出来上がった。ビデオも写真資料も豊富にある今では、作り得ないデザインであり、味わいとなっている。

 しかし顔のシワの部分に着目するとは、怪奇マンガ家らしい、着目点というか。マンガ絵というのは、老人などは別にしても、シワというのは省略しがちな部分だ。楳図さん流のリアリズムだったのだろうと思う。ともあれ、シワを描き込んだお陰で、希有なウルトラマン像となり、それゆえソフビにもなったのだろう。シワのお陰で、シアワセな結果となった。

 数年前には、桑田次郎のマンガ版『ウルトラセブン』がソフビ化されて(制作はマーミット)、嬉しくて幾つか買った。梅図版のウルトラマンもいつか出ないかと思っていたが、ついに登場した。そういう意味で、良き時代だ。こうなったら特撮コミカライズの大御所・一峰大二さんの描いた『ウルトラセブン』、いや、『ミサイルマンマミー』を出してもらうしかない(マニアックで、皆分からんがな)。

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posted by 諸星ノア at 16:46| Comment(2) | TrackBack(0) | オモチャ・フィギュア
この記事へのコメント
楳図先生のウルトラマンってどんなのか前から気になってたんだけど、すごいですねー。さすが、ウルトラきもいです。口元と耳のマガマガしさがもろ楳図漫画の世界・・・。ノアさん貴重なコレクションの公開ありがとう、うらやますい☆
Posted by 鯖丼の青 at 2006年11月03日 00:24
>鯖丼の青さん
 見事に楳図かずおに染まってますよ、『ウルトラマン』。今は古書店で探さないと読めない作品なのが、惜しいです。本当に面白いんで、復刻版を是非出して欲しいです。
Posted by 諸星ノア at 2006年11月03日 10:36

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