2014年11月02日

岡崎武志さんトークショー&サイン会@三省堂・神保町本店8F会場

 書評家でフリーライターの岡崎武志さんのトークショー&サイン会に参加してきました。

 場所は、東京・神保町。三省堂神保町本店8F。

 東京名物神田古本まつり&神保町ブックフェスティバル開催期間中にちなんでのイベントです。

 岡崎武志さんは、1957年大阪生まれ。書評家にして、無類の古本好きとして、古本好きには超有名な方。古本に関する著作、多数。

 8年前にも、同じく神田古本祭りでイベントがあり、その時は岡崎さんとイラストレーターの池谷伊佐夫さんのトークショー&サイン会でした。「古本漫談」っていうタイトルで、東京古書会館で開催されてました。

 今回は。三省堂です。大手書店主催。

 開催時間は、14時より。

 30分前に8Fフロアに行くと、会場に置かれた60脚ほどのパイプイスには、すでに20名ほど集まっていて、手前では、書籍の販売も始まってます。

 サインは、会場で買った本のみにもらえるシステム。三省堂主催であるからには、それが書店のうま味ですから、当たり前ですね。

 早速席を確保してから、本を確保。

『昭和三十年代の匂い』(ちくま文庫)
『貧乏は幸せのはじまり』(同上)

 それと『岡崎武志 挿絵展 2013』パンフレットがあったので、合わせて購入。これ、欲しかった。岡崎さんは味のあるイラストも描かれて、著作の挿絵は、ご自分でやられることが多い。

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↑ゲットした三冊。

 『貧乏は幸せのはじまり』は、私が買ったのが、最後の1冊でした。

 14時、トークショースタート。その頃には、会場は満員です。

 会場奥から、岡崎さんがリュックを背負って登場。いつもながら、気負わないスタイル。

 壇上には岡崎さんの最近の著作本が数冊並べてあって、岡崎さん曰く、今日はこの本を売れと言われているので、そのためのトークだとか(笑)。

 以下、何冊かあるのですが、私がメモ書きしたか所から、独断で絞って紹介します。

 『読書の腕前』(光文社知恵の森文庫)。

 数年前、光文社新書から出たものの、文庫版。出てから2〜3日で、増刷がかかって、すごいでしょ?と岡崎さん。

 帯のピース・又吉君が効いたんじゃないかなぁと、謙遜されてましたが。

 又吉君は、読書芸人として、帯の推薦仕事が多すぎて、今断っている状態の中、彼のラジオ番組に岡崎さんが出演してくれた恩義があるので、帯を引き受けてくれたらしいです。

 この本の中で取り上げた作家で、後に再評価された作家が何人かいて、芥川賞候補に何度もなった佐藤泰志などは、岡崎さんが本で取り上げた後、クレイン社から作品集が復刊され、『そこのみにて光輝く』が、2014年に綾野剛、池脇千鶴の主演で映画公開されました。

 たまに古本屋さんに、「次はどの作家がブレイクしそうですか?」って聞かれるそうですが、それは分からないそう(笑)。


 『親子の時間 庄野潤三小説作品集 岡崎武志編』(夏葉社)。

 岡崎さんは、好きな小説家を一人上げるとするならば、迷わず、庄野潤三を挙げるそう。

 いわゆる「私小説」を書く作家ですが、露悪的で自虐的ではなく、自分や自分の家族をモデルにした日常を淡々と書く筆致が特徴のようです。吉行淳之介や遠藤周作などと共に、「第三の新人」と呼ばれる小説家。1955年、芥川賞受賞。

 岡崎さんは、高校生の17歳の夏休みに旅行に出かけ、帰ってきたら、お父さんが亡くなっていたそう。

 父が亡くなった実感のないまま、ぷっつりと、父のいない人生を送らねばならなくなった。

 死の実感が湧かないので、お通夜も本葬も、全く涙が出なかったそうです。

 そんな時、庄野潤三の小説『夕べの雲』に出会ったそう。

 場面としては、お母さんと娘が買い物に出かけ、お父さんと幼い息子が留守番をして、お昼ご飯にカップ麺を食べるため、ヤカンに湯を沸かすところ。

 ヤカンは見つめてる時は沸かないもんだとお父さんが言って、息子と台所から離れたら、「ピーッ!」と湯が沸く音がした。

 その場面を読んで、岡崎さんは、号泣したそう。

 自分には、もう二度と父親とこういう時間は持てないのだと思うと、泣けて泣けて仕方がなかったらしい。

 お湯がピーッと沸いた場面で号泣するなんて、100人いて私一人だけど、それが小説の持つ力なんだと、岡崎さんは力説されてました。

 この本(『親子の時間』)は、夏葉社という、島田さんという30代の男性が一人でやっている出版社だそう。

 装丁・装画は、和田誠(デザイン・イラスト界の大御所。1950年代から現在まで、イラストやデザインの仕事が絶えたことがないという、リビング・レジェンド)。

 岡崎さんによれば、夏葉社は、2010年にバーナード・マラマッドの『レンブラントの帽子 』を、出版。

 島田さんは、この初出版に際して、いきなり、和田誠さんに装丁をお願いしたそうです。

 立ち上げたばかりの出版社だったら、普通は予算もないし、友達のデザイナーに頼みがちなのに、島田さんはあえて和田誠にトライしたそう。

 最初は断られたそうですが、何度も頼んで、誠意が伝わり、契約成立。

 今回の『親子の時間』も、和田誠の装丁・装画です。

 今年は、夏葉社創業5周年記念パーティーがあったそうで、○○(場所聞き漏らしました)借り切って、そこに100名くらいお客さん来たそう。

 ピース又吉君も、普通に客として来てたらしい。

 岡崎さんは、仲間と古本バンドを結成して、演奏したり、すごい楽しかったみたいで、終わった後は、1週間ボーッとしちゃったとか。曰く、「夏葉社ロス」(笑)。

 岡崎さんの著作は他にも、『貧乏はしあわせのはじまり』(ちくま文庫)、『本屋図鑑』(夏葉社)等々、取り上げていました。

 『貧乏はしあわせのはじまり』などは、各界の有名人の貧乏時代を紹介した本。

 表紙は、岡崎さんが大学時代最初に住んでいた、下宿の外観。大家さんに聞いたら、鶏小屋を改装して作ったんだとか。ドアを開けると、いきなり土間で、ドアは鍵が掛からなかったそう。

 この本で評判なのは、巻末にある、フリーライター・荻原魚雷さんとの対談だとか(笑)。題して、貧乏対談。

 普通対談は、録音して起こしても、そこから使えるのは1/4くらいだそう。ところが魚雷さんとの対談は、9割使ったらしい。

 つまり切るとこないくらい、実用的な貧乏話が満載だそうです。


 そんなわけで、1時間のトークショー終了です。

 続いて、サイン会へ。

 サインは、為書き制。ちゃんと読めるように、書いておきました。

 サインを書いて頂いている間に、岡崎さんのイラストについて、和田誠さんに絵が似てますねと申し上げますと、描く度に画風が一定しないけれども、和田さんは大好きで影響を受けてますとのこと。

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↑頂いたサイン。

 挿絵展図録には、ご自身の似顔絵も入れて下さいました。

 人生苦しいことが多いけれど、ペン1本で家族を食わせ家のローンを払い、本と仲間に囲まれ朗らかに生きている岡崎さんの人柄にふれたイベントでした。

 岡崎さん、お疲れ様でした!


※岡崎武志さんの好きなシンガーソングライター・井上陽水のナンバーで、「長い坂の絵のフレーム」(1998年)。

長い坂の絵のフレーム

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posted by 諸星ノア at 21:26| 古本