2014年10月02日

『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』と『ウルトラマンが泣いている』

 『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』(中島春雄著/洋泉社)と、『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』(円谷英明著/講談社現代新書)読了。

 『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』は、数年前に出た書籍版を、新書版にしたもの。書籍版は値段が高くて、手が出なかったんですが、今回は925円+税なので、手が出やすかったのです。

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↑『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』表紙。

 今年ゴジラ生誕60周年で、ハリウッド版『GODZILLA』公開を記念しての再リリースでしょう。

 中島春雄さんは、1929年山形県出身。元東宝所属の大部屋俳優。『ゴジラ』で名をはせる円谷英二監督からの指名で、日本初の怪獣着ぐるみ俳優になったことで、有名。 現在85歳。

 1954年公開の第1作『ゴジラ』から、1972年公開『地球攻撃指令 ゴジラ対ガイガン』まで18年間、ゴジラの着ぐるみの中に入っていました。

 年齢で言うと、25歳から43歳まで。

 中島さん曰く、大部屋俳優はスター俳優と違って、スタントマンや通行人、時代劇の斬られ役まで、言われた役は何でもやるのが仕事。代わりはいくらでもいるから、嫌と言えば、次から仕事は来ないからだそう。

 ゴジラの仕事も、そんな仕事の1つとして、言われたからやっただけという感じだったそう。

 
 『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』は、昨年出た本。円谷英明さんは、円谷英二監督の長男、一(はじめ)の二男です。1959年東京生まれで、 円谷プロ・六代目社長。

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↑『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』表紙。

 「円谷プロダクション(当初は円谷特技プロダクション)」は、円谷英二が1963年に、東宝の出資を得て起こした会社で、『ウルトラマン』シリーズで有名な制作会社です。

 その円谷プロが、今日どうして没落してしまったか、身内ならではの視点で、生々しく書いたのが、本書です。ウルトラシリーズ大好きな方には、おそらく衝撃の内容だと思います。もう社内=身内の権力争いと金の話です。

 
 『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』では、中島さんの役者半生が、わりと痛快に語られてまして、明るく読めます。快男児の自慢話的な(笑)。

 中島さんは大のタバコ好きで、ゴジラを着て、散々火薬やら煙を吸い込みながら、着ぐるみを脱いでまずするのは、タバコを一服。セッティング待ちが長いと、ゴジラを着たまま、のど元に空いているのぞき穴兼空気穴からタバコを通してもらって、そこからタバコを吸って休憩したこともあるとか(笑)。豪快です。

 故人も多くなった東宝俳優仲間の、懐かしい話も聞けます。

 あとさらっと語られてますが、大阪万博(1970年)の際、アトラクションショーでゴジラを着たそうですが、ステージではなんと、ゴジラ対ガメラをやったそう。

 東宝のゴジラと大映のガメラと言えば、昭和怪獣少年なら、夢にまで見る二大怪獣そろい踏みです。余興とはいえ、ジャイアント馬場対アントニオ猪木クラスの戦いですよ。

 さて、円谷監督は、中島さんなど役者さんにはとても優しかったそうで、危険な目にはたくさん合わせられたけども、怒られたことは一度もなかったそう。

 しかし英明さんの本によれば、祖父として孫の英明さんには当然優しいですが、英明さんが撮影所に遊びに行くと、スタッフがピリピリしていたそう。

 若い女性スタッフが、「おじいちゃん怖いから、気が抜けないわ」と英明少年に愚痴っていたそうです。

 2冊を読み比べると、円谷英二監督の、内と外の二面性が見られて面白いです。

 初代社長・円谷英二と二代目社長で長男の一(はじめ)は、良い作品を作ろうとし過ぎて金をかけすぎ、会社経営に失敗しかけました。

 でもまだ二人は、クリエーターとしての才能があるだけ良かったのですが、その二人が相次いで死去し、その後社長を引き継いだ英二の二男である三代目社長・皐(のぼる・故人)、その息子・一夫(四代目・八代目社長) 等々、物づくりはしないし、「ウルトラマン」をキャラ商品化して食って行こうという、行き当たりばったりの経営で・・・。

 クリエイティブの才能を受けづけないのは仕方ないとしても、優秀な脚本家や、プロデューサーを雇うことは出来たはずなのに、それをしない。

 またずさんな、会社の金の流れ。社長による会社の金の私的流用の多さ。

 結果現在は、円谷プロから、創業一族は一切排除され、パチンコメーカー・フィールズの子会社になっています。現社長(十代目)は、円谷プロ生え抜きで唯一残ったカメラマン出身の役員・大岡新一氏。

 円谷英二監督命日も、個別の墓参りが通例となっているようです。お墓の前で会うと親族長年の遺恨で気まずくなるらしく、いつしか会わないように時間をズラし合うようになったとか。

 ウルトラマンと仮面ライダーと言えば、日本が誇る特撮二大ヒーローです。

 作品イメージからすると、ウルトラマンシリーズの方が仮面ライダーシリーズより特撮のスケールがデカいので、会社のイメージや会社規模もそれに比例しそうですけども、実情は東映に比べ、円谷プロの未熟さというか、大人と小学生くらいの差を感じました。

 ちなみに中島さんの本によれば、東宝は、スター俳優と大部屋俳優は、ギャラや画面の扱いは雲泥の差があるけれども、休憩中や、仕事が終われば、普通に口をきく間柄だったそう。三船敏郎とか、仲よしだったらしい。

 なので、後年になり、他の映画会社の話を聞いて、スター俳優と大部屋の格差が厳然とあることにビックリしたとか。自分がいた頃の東宝では、考えられない、と。 特に東映でのスターと大部屋の差は、歴然みたいです。

 そんな色々読み比べも出来る、2冊ですが、どういう順番で読むと、心が晴れるかな(苦笑)。

 まぁでも、会社がどうあれ、制作された作品に罪はないですからね。

 未だに私は、巨大ヒーロー・怪獣好きで、その刻印は、『ウルトラセブン』で打たれちゃってるんで。等身大ヒーローも好きだけど、やっぱり巨大物が好き。ゴジラが暴れると、反射的に血がたぎりますからね。

 ただそれは、ジジイの懐古趣味になってしまうのかなぁ。今は、『妖怪ウォッチ』時代だから。

 とりあえず、もうそろそろ、ペラペラしゃべるウルトラマンは止めて欲しいな。私も泣いてます(苦笑)。巨大でしゃべらないからこそ、神秘的な存在なんだから。

 しゃべるのは、夏の『ウルトラマンフェスティバル』だけで良い。


※中島春雄さんのコメント映像です。2010年夏、東京ビックサイトにて開催、「ワンダーフェスティバル2010 SUMMER」にて。

 海洋堂から出ている、特撮リボルテックというアクションフィギュアシリーズがあるんですけども、そこから、バラゴンがリリースされることを記念しての映像ではないかと。

特撮リボルテックコメント:スーツアクター・中島春雄氏 


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posted by 諸星ノア at 20:55| 読書感想(マンガ含む)