場所は、東京・八王子。
JR八王子駅北口から歩いて15分強にある、八王子市夢美術館。
初めて行く美術館です。
というか、八王子駅に下車するのも、初めてですね。

↑八王子市夢美術館。

↑展覧会入り口。
馬場のぼる先生は、1927年青森県生まれ。幼い頃から、絵を描くのが好きだったそう。
旧制中学卒業後、海軍予科練を経て、海軍航空隊へ入隊。特攻隊員の訓練中に、終戦を迎えます。
小学校代用教員などいくつかの職を経ながら、漫画を勉強。1950年にマンガ家デビュー。
1955年(昭和30年)前後は、手塚治虫や福井英一らとともに、「児童漫画界の三羽ガラス」と言われ、売れっ子だったそうです。
それから徐々に絵本に活動を移して、猫が主人公の『11ぴきのねこ』シリーズで知られることになります。
2001年、胃がんで死去されました。享年73歳。
以上、ウィキペディアからの引用です(汗)。
私にとって馬場先生といえばー
藤子不二雄Aの『まんが道』で、高校三年の満賀道雄(藤子不二雄A)と才野茂(藤子・F・不二雄)が原稿持ち込みに富山県から上京し、少年画報社を訪れた際、編集長室で馬場先生とすれ違う場面が印象に強いです。
実は有名な『11ぴきのねこ』すら、まともに読んだことがなく(ほのぼの系の絵柄は見たことアリ)、上記の『まんが道』の印象だけで、展覧会に興味を持って行った次第です(汗)。
たまにテレビにも出てましたから、お顔も知ってましたし。
展示は、馬場先生の小学生時代の絵日記とか、中学生時代のノートなどが、まず目を惹かれました。
小学生時代から、すでにめちゃくちゃ絵が上手いです。丹念に描かれていて、子供時代から絵を描くのが好きだったことが分かります。紙風船を水彩で描写した絵がありましたが、とてもリアルで小学生が描いたとは思えません。
ノートのはじに落書きするのは、学生時代あるあるですけども、落書きですら、完成度の高い絵です。
ノートのサイズが今よりも小さいから、落書きも小さいんですけども、その制約で、よけい描写力がアップしたのかもしれません。小さく描くのは、技術がないと出来ないです。
プロになってからのカチッとした描線は、すでにこの頃に見受けられて、持って生まれた性質なのでしょう。
マンガ家時代の展示では、1950(昭和30)年代の作品から。
生原稿が少な目なのが、気になります。
マンガ家・一峰大二先生が以前言ってましたが、当時の出版社は、印刷に回したあとの原稿は破棄するのが常だったようですから、現存率が低かったそう。
なので、作品展示も、当時の雑誌付録などをバラして、展示してました。それはそれで、貴重な付録がもったいない気がします。
この時期の作品で、孤児のブタが主人公の『ブウタン』は、一部生原稿が展示されていて、貴重。
あとの絵本でも分かりますけども、ブタが出てくる作品が多いですね。
ああ、そういえば、子供時代の絵を見てると、動物の絵が多いことに気づきます。馬とか、身体が非常に上手く描けてます。
動物を身近に見て育ったのでしょうか。展示されている作品を見渡して、山や川に囲まれた田舎が非常に多く出てくるので、故郷青森の自然溢れる中で育ったことが、作品に現れているのでしょうね。
さて、絵本作家時代になると、ますます線が洗練され、色彩も透明感のある、スパッとした描き味に磨きがかかってきます。
ごちゃごちゃ筆を動かさず、スパッと色を塗ってる感じ。
さらに『11ぴきのねこ』シリーズになってくると、制作方法をリトグラフに変えて、色調がより一層クリアになっていきました。
リトグラフは版画の一種で、平版画。位置あわせの描写版に色版を5枚くらい重ねて、色画面を作っていく方法です。
昔流行った、プリントゴッコに似てますね。プリントゴッコは孔版画ですけども、描版に色版を重ねて画面を刷っていくのは、似てます。
ほのぼのタッチはますます加速して、見た目はほんわか。
でもねこ達は、けっこう残酷な行動をとったり、絵柄とのギャップが大きかったり。
館内に展示されてる馬場先生の言葉に、「ねこ達は自分達のその時々の都合で善にも悪にもなるけれども、それは人間も同じではないでしょうか」というのがあったり、「人生はほろ苦いことが待っているものだから、子供のうちからそれを教えた方がいいのではないでしょうか」など、絵本にこめた思いが綴られてます。
とぼけた作風の中に、どこか人生を達観している風が感じられるのは、こういう考えがあるからなのかもしれません。
馬場先生が成人してからの、スケッチの様々も展示されていました。
描写力は高いですけれども、子供時代のそれよりも、面白みはないかなぁ。瑞々しさにやや欠ける感じ。
館内は、小中学生が多く、しかもメモして見ている子が散見されました。
この美術館は、中学生以下は無料で、メモを取ってるところを見ると、夏休みの宿題で、ここに行ったことをレポートして提出しろと言われてるのかもしれません。
来館記念に、図録を買おうかなと思ったんですけども、特別そういうのはなくて、馬場先生の絵本が多く販売されてました。あとは絵はがきとか、ねこのぬいぐるみなど。
私は絵はがきを、3種類購入。
もうちょっと、展覧会を俯瞰できる資料的なものが置いてあれば良いんだけどなぁ。残念。
そんなわけで、美術館を後にしました。

↑絵はがき3種。
※NHK『この人 手塚治虫ショー』(1983年10月6日)から、馬場のぼる先生の登場映像です。NHKホールからの公開収録番組。
手塚治虫先生が『漫画少年』誌上で、福井英一先生をこき下ろしたことで起こったケンカを、手塚先生の親友でもある馬場先生が仲介をしたエピソードを話します。
いわゆる「黒テヅカ」のエピソードでもあります(苦笑)。
司会の加賀美幸子アナ、若かったですね〜。
手塚治虫ショー Part 2
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