八重洲ブックセンター本店8Fで行われた、『@ll(オール)藤子不二雄A 藤子不二雄Aを読む』(小学館刊)発売を記念しての、トークショー&サイン会。
トークの司会・聞き手は、小学館・西堀氏。
西堀「本の中で、ブルボン小林さん(芥川賞作家・長嶋有)が、先生の描き文字を評価されてますね。「ギャンギャンギャン!」とか。それから、コマの枠を額縁にしたり、太い黒縁にしたのも、発明だと評価されてました」
藤子A「僕は映画が好きで、マンガでは描き文字は、映画の効果音と同じ効果を狙ってるんです。車は普通、ブーって走るんだけども、それじゃつまらんから、ギャンギャンギャン!って。その方が、走ってる臨場感が感じられると思ってね。僕の心の音でもある。
黒縁とかは、そこのコマを強調したいからね。ラストシーンとか。
最初に黒縁にしたのは、『毛沢東伝』を描いた時(1971年)だったかな。『漫画サンデー』の編集長が、劇画を描いて欲しいという依頼があって。当時『長征』という毛沢東が紅軍を率いて1万2500kmを歩いた物語を読んで、感動してたんで、これを描きたいと言ったの。別に(共産主義とか)思想的に共感したわけじゃなしにね。まだ日中国交が正常化する前だから、資料が少なくて、資料集めに苦労しました。当然今までのナンセンスの画風じゃ描けないから、陰影を強調した劇画風に変えて。そしたら、画面が真っ黒なマンガになちゃった(苦笑)。確か、僕の前のページは谷岡ヤスジのマンガで、後ろはトルコ風呂のルポとかの間だったかな(苦笑)」

↑『毛沢東伝』表紙(復刻版)。
本の中で、船越英一郎さんとの対談がありますが、隣で藤本先生(相棒の藤子・F・不二雄)が仕事をしているのに、ゴルフで抜け出すのが申し訳なくて、言い訳しながら出て行く話をされてますね。
藤子A「いや、申し訳ないとは思わないんだけども。僕は遊びも目一杯やるけど、仕事は藤本君と同じ量をこなしてたんでね。遊んだ分は、徹夜で仕事をやって。藤本君は、本をたくさん読む以外、遊びは一切やらないし、元々身体が弱いから、徹夜は出来ないんです。
遊びと言えば、赤坂に有名な旅館があって、色んなジャンルの有名人ばかりが来るサロン的な旅館なんだけど、そこでよく麻雀とか色々やりました。
そこで、井上陽水氏(シンガーソングライター)や、吉行淳之介さん(小説家/娘は吉行和子)や、芦田伸介さん(俳優)とも知り合ったんです。芦田さんは、わがままな紳士でね(苦笑)。朝いきなり仕事場に電話かけてきて、「安孫子君、ゴルフ場に来い!」って言うんで、「締め切りがあるんです」って言っても、電話切っちゃう。仕方なく仕事を抜け出してゴルフ行くんだけども、その時は藤本君に申し訳なかったかな(苦笑)。それで、帰って徹夜で仕事。
藤本君は天才だから、『ドラえもん』で分かるように、頭の中の空想だけで、マンガが描けるんです。僕は体験をマンガに描くんで、遊びは大切なんです。
どうも僕は、男性に人気があって、女性に人気がない(苦笑)」
西堀「でも、宮沢りえさんとは、「りえちゃん、あびちゃん」と呼び合う仲じゃないですか(笑)」
藤子A「ああ、4月6日に、りえちゃんの誕生日会に行ってきました。僕が去年『笑っていいとも!』(のテレフォンショッキング)に出演した時、りえちゃんに大きな花束もらってね。その後りえちゃんが『いいとも』に出たの知らなくて、花束贈るの忘れちゃって、薄情者!って回りに言われちゃって(苦笑)」
西堀「巻末の寺田ヒロオさんの手紙も、素晴らしいですね。トキワ荘に引っ越しをするにあたっての、心得や、準備すべき調理道具類とか細々と書かれていて」
藤子A「テラさんは、僕らより3つくらい上で、当時23か4だったけど、とてもそんな若い年齢じゃ書けない内容。用意すべき鍋や釜、コンロのことや、住人の氏名、ハガキを持って挨拶しろなど、細かいアドバイスでね。
僕らが仕事をゴッソリ落とした時も、手紙をくれて励ましてくれてね。人間誰しも失敗するんだから、大事なことは繰り返さないことだって。
ほんと、テラさんがいなかったら、今もこうしてマンガ家をやってないです。
今は携帯・スマホの時代で、僕はアナログ人間だから一切そういうの持ってないんだけど(西村「持って欲しいんですけども(苦笑)」)、隣の人と会話するのも、スマホでやるでしょ。やっぱり人間は裸の付き合いが大事で、それをトキワ荘時代に体験しました。そりゃ、生身の人間と付き合えば、嫌な思いや傷つくこともあります。だけど、それも成長の糧になるんでね」
西堀「最後になりましたが、みなさんにメッセージをお願いします」
藤子A「この本は値段は高いんだけど、内容を詰め込んで作りました。これが僕の最後の単行本なんで、友達にも薦めて下さい」
以上、いつもながら、話し上手の楽しい藤子A先生でした。
トークの合間合間で、「今回が最後の単行本」と繰り替えされるので、気弱になったかなって、心配になっちゃったりしました。
続いて、3分間だけの撮影タイムから、サイン会へ移行です。
ー藤子不二雄A先生トークショー&サイン会@八重洲ブックセンター本店 その3へ続く。
※懐かしい、宮沢りえのポカリスエットCMをどうぞ。当時、15歳。ぷっくりして、可愛かったですねぇ。
宮沢りえ ポカリスエット CM 1988
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